(第59回)製造業の海外移転が電力価格の上昇で加速

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 (注1)特定規模需要とは、電力事業の自由化対象となる大規模な需要。なお、企業が使用する電力には「低圧電力」に分類されるものもあるが、特定規模需要の1割以下である。

(注2)大和総研は、電力供給が1%減少すると鉱工業生産は0・92%減少し、鉱工業生産が1%減少するとGDPは0・3%減少するとしている。この弾力性を用いれば、GDP減は1%程度となる。ただし、電力供給と生産の弾力性は1より高いとの見方もある。また、計画停電では生産スケジュールが攪乱されるので、影響が大きい。

国内需要を満たすため製造業が海外で生産

夏以外の季節では、量的には必要電力のかなりは確保できるだろう。しかし、火力発電の比率が高まるから、電力コストは上がり、生産コストも上がる。したがって、製造業の日本国内での活動は難しくなる。円高によって、10年秋以降、生産拠点の海外移転が始まっていたが、それが加速する可能性が高い。

これは、「日本人が使うものを、アジアの労働力を用いてアジアで作る」ということである。

こうした生産方式は、1990年代から、電気器具では一般的なものとなっている。アジアの現地企業に生産を委託(OEM)し、それを日本に輸入して販売する方式だ。自動車でも、同じことが進んでいる。スズキはハンガリーで生産したスプラッシュを、日産自動車はタイで生産したマーチを日本に輸入している。

日本が輸入する際の関税を引き下げたいのなら、外国の承認なしに日本だけでできる。そのためにFTA(自由貿易協定)やTPP(環太平洋経済連携協定)といった仕組みは必要はない。これまでは、日本で作った部品を生産地に持ち込む際に関税がかかるので、それを下げるためにFTAが必要と考えられてきた。しかし、部品まで含めて現地で生産すれば、その必要もなくなる。

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