「やせられない人」は腸内環境の重要さを知らない 腸の大きすぎる影響力を知らない人は損をする

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さらにさかのぼると、1966年には植物性たんぱく質の摂取量は動物性たんぱく質の2倍近くあり、戦後の1947年には動物性たんぱく質の約3倍も、植物性たんぱく質をとっていました。

当時は、玄米をはじめ、大麦、ひえやあわなどの雑穀、豆腐や味噌などの大豆食品からたんぱく質をとっていましたが、そうした食品の摂取量は減少し、ここ数十年で動物性が主流へと移り変わった様子が、こうした調査から明らかとなっています。

その背景としては、かつては、昨今のように肉や魚が自由に手に入ったり、長期保存が可能な状況ではなかったりしたこともあるでしょう。玄米100gに含まれるたんぱく質量は6.8gで、白米の3.5gより多いものの、豚の赤身肉100gに含まれるたんぱく質量の20.9gと比べるとかなり少ないことがわかります。たんぱく質の含有量としては、たしかに肉のほうが豊かです。

ただ、だからといって当時の日本人はみんなガリガリに痩せていたかといったら、そうではありません。穀物を中心とする炭水化物で、体を維持する仕組みができていました。

そのことを裏付けるかのように、日本人の腸内細菌には、炭水化物を分解する菌がほかの国の人々より多いことが報告されています。これは早稲田大学の服部正平教授らが2016年に科学雑誌『DNAリサーチ』に発表したもので、日本人106人の腸内細菌叢を解析し、アメリカやフランス、ロシア、中国などの計11カ国の国民の平均的な腸内細菌叢データと比較しました。

日本人に一番多いのは「ブラウティア属」に分類される菌で、ビフィズス菌も他国より多くいました。ブラウティア属の菌の特徴は、炭水化物に含まれる食物繊維や難消化性でんぷん、難消化性オリゴ糖をエサにして、私たちの体にとって有益な短鎖脂肪酸などを生み出してくれることです。

「腸内細菌を味方につけて痩せる」には?

数年前から、人気のダイエット法として炭水化物の摂取量を減らす糖質制限が定着しています。しかし、腸と腸内細菌の観点で見ると、安易な「炭水化物抜き」はお勧めできません。

炭水化物抜きダイエットの悪循環
出所:『9000人を調べて分かった腸のすごい世界』より

日本人の腸には炭水化物のうち、食物繊維や難消化性でんぷん、難消化性オリゴ糖をエサにする腸内細菌が圧倒的に多いということは、やみくもな食事制限では次のような負のサイクルが起こる可能性があるからです。

「短鎖脂肪酸」は代謝促進以外にも多彩な効果があることから、炭水化物抜きは、体重コントロール以外でも、「免疫のバリア機能の強化」「血糖値を一定に保つホルモンであるインスリンの分泌促進」「生活習慣病の予防と改善」といった健康効果を得にくくなると考えられます。一時的な体重や体脂肪の減少と引き換えにするには、大きな代償に思えてなりません。

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