金価格がドル建てで史上最高値になるのはいつか すでに円建ては高値更新、目先は下落懸念も?

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さらに問題を複雑にしそうなのが、原油価格の先行きだ。4月3日にOPECプラス(石油輸出国機構と主要産油国で構成)が日量100万バレル(1バレルは約159リットル)を上回る追加減産を打ち出した。

単独でも日量50万バレルの減産を行うことを表明したサウジアラビアがリーダーシップを取る形でまとめ上げた今回の減産は、この5月から開始され、年末まで継続される可能性があるという。

3月末時点では1バレル=70ドル台半ばにあったWTI原油価格は、大幅減産の決定を受けて80ドルの節目まで一気に値を回復した。

アナリストの間では「早ければ4~6月期中に1バレル=100ドルの大台を回復する」との見通しまで浮上している。一方では景気の落ち込みに伴う需要の伸び悩みもあり、今回の減産で本当に需給が引き締まるのかは微妙なところだ。

だが「70ドル台からのさらなる価格下落は容認できない」という強い意志を、サウジをはじめとした産油国が示したことの影響は大きい。仮に再び値を下げることがあっても、「OPECプラスは再び追加減産策を打ち出してくれるはずだ」との思惑から投機的な買いを呼び込む可能性は高く、100ドル台到達も意外に早く実現するかもしれない。

もともと例年4月から5月にかけては、夏場のドライブシーズン到来に備えてガソリン需要が増加、原油相場もそれにつれて上昇しやすい時期でもある。昨年夏以降はむしろインフレの抑制要因となっていたエネルギー価格が上昇に転じれば、インフレ圧力が再び高まってくるのは避けられない。

結局のところ、インフレが完全に落ち着くまでにはまだかなりの時間を要する可能性が高い。それまでは相場も不安定な値動きが続くと考えておいたほうがよい。

繰り返しになるが、安全資産としての金の需要は、この先も大きな押し上げ要因になる。ただ物価に関して再び強気なデータが出てくれば、FRBの利上げ継続観測が強まり、金利の上昇やドル高の進行を嫌気する形で、金が大きく売られる可能性も十分にあると考えておいたほうがよい。

この先、FRBが自信をもって利下げへと転じることができるようになるほどインフレ懸念が後退してくれば、金は安定した上昇トレンドが見られるようになるはずだ。ETF(上場投資信託)を含む金の売買をする場合は、今後も物価関連指標をにらみながら、かなり不安定な相場展開が続くことを頭に入れておきたい。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

松本 英毅 NY在住コモディティトレーダー

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まつもと えいき / Eiki Matsumoto

1963年生まれ。音楽家活動のあとアメリカでコモディティートレードの専門家として活動。2004年にコメンテーターとしての活動を開始。現在、「よそうかい.com」代表取締役としてプロ投資家を対象に情報発信中。NYを拠点にアメリカ市場を幅広くウォッチ、原油を中心としたコモディティー市場全般に対する造詣が深い。毎日NY市場が開く前に配信されるデイリーストラテジーレポートでは、推奨トレードのシミュレーションが好結果を残しており、2018年にはそれを基にした商品ファンドを立ち上げ、自らも運用に当たる。ツイッター (@yosoukai) のほか、YouTubeチャンネルでも毎日精力的に情報を配信している。

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