キヤノン御手洗氏が「あわや取締役を退任」の衝撃 3月の株主総会で賛成率50.59%と薄氷の再任
高山氏のいう「コンセンサス」は確かに得られているようだ。国内の主要機関投資家のほとんどは、東証プライム市場上場の企業に対し「女性取締役が存在しない場合、代表取締役の選任に反対する」という基準を採用している。このような基準を採用する機関投資家は、2023年に入ってぐっと増えた。
また2022年の時点で、東証プライム市場上場企業の77%に女性取締役がいる。「女性取締役ゼロ」の企業は、プライム市場ですでに少数派だ。そのことから機関投資家は、「自信を持って基準どおりに賛否を判断しているのではないか」と高山氏はみる。
女性取締役の選任を要請しても、現在の日本企業は十分対応できる。機関投資家はそう判断しているというわけだ。もちろん、アリバイ作りのように女性取締役を入れるだけで終わってしまえば、それは問題だ。
機関投資家への「警鐘」
一方、今回の御手洗氏再任に対する低い賛成率を、機関投資家自身への「警鐘」と捉えるのは、りそなアセットマネジメントの松原稔執行役員だ。りそなグループ傘下で44兆円の運用資産残高を抱える同社は、主要国内機関投資家の1社に数えられる。
多様性の確保や環境問題への取り組み、ガバナンスといった非財務情報に対する評価は、業績や株価などに比べると難しい。結果として、賛否の割れるケースが増えていくとみられる。それゆえに、機関投資家の判断が企業に与える影響は大きくなる。
「議決権行使の重みが増す中、行使基準に基づいて形式的に判断するだけではいけない。対話を通じ、企業の取り組みや目指す方向性についての深い理解が求められる」(松原氏)。行使基準の明確化が求められる一方、行使の重みは増している。その狭間で機関投資家も悩んでいる。
3月期決算の多い日本企業は、6月に総会シーズンを迎える。日本でも有数の著名経営者に突きつけられた50.59%という賛成率をどうみるか。ほかの企業や株主にとっても他人事ではないはずだ。
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