キヤノン御手洗氏が「あわや取締役を退任」の衝撃 3月の株主総会で賛成率50.59%と薄氷の再任

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今年は、議決権を行使する(総会で賛否を投じる)機関投資家に助言を行う会社も、女性取締役の不在を問題視した。大手助言会社として知られる2社のうち、アメリカのISSは御手洗氏の再任に反対することを推奨。昨年までの賛成推奨から一変した。

キヤノンにすると「結果としての不在」

キヤノンは御手洗氏の賛成率が50.59%だったことについて、「各投資家の議決権行使結果を確認したうえで、株主との対話をより一層丁寧に行い、当社の経営に対するご理解を得られるように取り組んでいきたいと考えています」とコメントする。

女性取締役の不在が原因だったかについては、精査のための時間を要する。だがキヤノンによれば、直近1年間は女性取締役の不在について機関投資家から指摘されることが増えていた。その際には取締役選任の考え方について説明をしてきたという。

キヤノンは1937年の創業当時から、出自、性別、学歴といった属性に基づかず、「実力主義」に基づく人材登用を行ってきたと謳う。大企業にありがちな学閥なども存在しない。

取締役の選出母体となる執行役員は、社内の「経営塾」で学んだ上級管理職の中から、外部有識者による講評と人事評価によって選ばれる。ここでも前提となるのは実力主義だ。

なお執行役員には現在、女性や外国籍の者もいる。経営課題について議論する経営戦略会議にも女性の執行役員が含まれ、多様性は担保されているとする。

しかし差別はないと訴えても、女性取締役の不在自体を問題視する株主には響かない。アファーマティブアクション(積極的差別是正措置)として、欧米を中心に女性が半ば強制的に登用される場面も増えている。「結果としての女性不在」だとしても看過されなくなっているのかもしれない。

市場ではすでにコンセンサス

「均質なメンバーの取締役会では、大きく変化する事業環境に今後対応できないという認識は、株主、企業ともに同じではないか。多様性の観点で女性取締役の存在は重要、ということは日本においてもコンセンサスになっている」

そう話すのは、コーポレートガバナンスに詳しい高山与志子氏だ。IR・ガバナンスのコンサル会社のジェイ・ユーラス・アイアールで副会長を務める。金融庁の有識者会議メンバーとして、コーポレートガバナンス・コードなどの改訂作業に携わった経験も持つ。

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