脱炭素の次は「生態系維持」が経営目標になる 世界の新潮流「ネイチャーポジティブ」の衝撃
生物多様性、生態系保全が支える真の脱炭素
――温室効果ガスの排出削減と、生物多様性の維持および自然生態系の保全は関係ないという認識をどう見るか?
完全に間違っている。自然生態系は気候変動により影響を被るし、また、気候変動対策を進める私たちを助けてくれる。温室効果ガスの削減策、そして気候変動への適応策(被害軽減策など)とも、自然生態系の保全・回復が大きな支えになる。
まず、生物種は山の上に移ったり、北上したりすることで気候の変化(温暖化)に慣れようとする。時には北上しても陸地がなくなり、消滅することもある。生きものは、気候変動により大きな影響を受ける。
――気候変動対策の助けになるとは。
温室効果ガスの排出削減において、自然はわれわれの強力な味方だ。科学者たちの研究により、大気中に排出される二酸化炭素(CO2)のおおむね3分の1は(海、森、土壌など)自然により吸収され、バイオマス(生物体量)の中に蓄積されることがわかってきた。自然は、大気中に含まれるCO2を減らす強力な味方といえる。
砂漠化や都市のヒートアイランド現象を考えてみてほしい。東京のような都市で気温が上昇しても、より多くの緑、植栽があれば、気温を下げるのに役立つ。沿岸域では、強風による高潮や洪水から、マングローブの森が人々を守ってくれる。私の故郷は山国で、私たちは(大雨の際の)洪水や土砂災害に脅かされている。だから私の国では森を自然のリスクに対する防衛線とみて、法律で守っている。これは多くの国で同じだと思う。
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