部下の心をへし折る管理職の「悪気のない一言」 職場の心理的安全性を下げる無意識の口癖

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たとえば、メンバーの質問に対して、「またその質問? この前も説明したでしょ」と面倒くさそうに返したりしていませんか。

あるいは「そんなこともわからないの?」「またやったの?」とあきれてみせたりしていないでしょうか。

自分は何気なく、あるいは冗談のつもりで言ったとしても、それが相手には小さなトゲとなって刺さることがあります。そしてこちらに悪気がないだけに、受け取る側は抗議の声を上げにくく、飲み込んでモヤモヤが残ってしまいます。

このように、ハラスメントには至らないものの、相手を動揺させたり不快感を与えたりする言動を、「マイクロアグレッション」と呼びます。日本語に訳すと「小さな攻撃」です。

相手に対してマウントを取る行為も、マイクロアグレッションの一例と言えるでしょう。

言葉に出さずとも、仕草だけでNG

マイクロアグレッションは言語表現だけでなく、態度や表情などの非言語表現にもあります。

たとえば、リアルの場でメンバーが話しかけてきても、パソコンから顔を離さず「あー、はいはい」と受け流しながら聞く態度も、マイクロアグレッションです。マネジャーは単に忙しくて顔を相手に向ける余裕がなかっただけなのかもしれませんが、メンバーは「ちゃんと話を聞いてもらえていなかった」「雑に扱われている」というメッセージを受け取り、心理的安全性を感じられません。

マイクロアグレッションは日常的に起きていて、100%防げるものではありません。それでも、マネジャーがメンバーの立場に立った言動を少し意識するだけで、確実に減らしていくことはできます。

自分の何気ない言動が相手の心理的安全性を損ねていないか、お互いに気をつけながら接していきたいものです。

ピョートル・フェリクス・グジバチ プロノイア・グループ株式会社代表取締役、株式会社TimeLeap取締役、連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者

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​Piotr Feliks Grzywacz

ポーランド出身。モルガン・スタンレーを経て、Google Japanでアジアパシフィックにおける人材育成と組織改革、リーダーシップ開発などの分野で活躍。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。ベストセラー『ニューエリート』(大和書房)、『パラダイムシフト 新しい世界をつくる本質的な問いを議論しよう』(かんき出版)など著書多数。

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