リーダーに大切な「繰り返し、何度も伝える」姿勢 テニスとシリコンバレーで学んだチーム運営法

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さらに言うと、ミッションは繰り返し伝えるだけでなく、わかりやすく伝えることも大切です。どんなに重要で魅力的なミッションや目的であっても、複雑に説明していたら伝わりません。

わかりやすく物語のように説明することを英語でストーリーテリングといいますね。スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクを見ていると、ビジョンを説明するのがとても上手で、ストーリーテラーだと感じます。プロダクトやサービスを使ってくれるユーザーはもちろんのこと、投資家やさまざまな仲間を巻き込むのに非常に役立っています。

「自分のアイデアだ」と思うようになる

ストーリーテリングは何もリーダーに限って必要なことではなく、コミュニケーションを取るうえで誰しも必要なスキルでしょう。事実関係やデータを淡々と伝えるのではなく、多少なりとも聞き手の感情を動かしたり、共鳴したりするようなストーリーに組み込んだほうが効果的です。私もグーグル時代に、「このビジョンのプロダクトをつくらなかったら、将来のグーグルはありません」という、ちょっと神妙な語り口で相手の注意を引くように心がけていました。

具体的なアイデアをチームに説明する際も、やはり物語のようにわかりやすくするのが肝心です。そのうえで、ミッションと同様、繰り返ししつこく話します。特に難しいコンセプトやプロダクト、新しいサービスを実現するにあたっては、説明も回数を重ねないと伝わりません。

Yohanaを含めて今までの経験を振り返ると、あるアイデアを初めて説明したとき、チームのみんなは「やりたくない、だめ、考えられない」とたいてい否定します。2回目に同じことを言うと、「なんであんなこと言ってるんだろうな?」と不思議がります。おもしろいのはここからで、3回、4回、5回……6回目ぐらいになると、「ヨーキーがああ説明しているけど、あれは私のアイデアなんだよ」と言ってくれるようになるのです!

松岡 陽子 パナソニック ホールディングス執行役員、Yohana(ヨハナ)CEO

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まつおか ようこ / Yoko Matsuoka

1971年東京都生まれ。1993年カリフォルニア大学バークレー校卒業後、マサチューセッツ工科大学に進み、1998年博士号取得(電気工学、コンピューター科学)。ハーバード大学博士研究員、カーネギーメロン大学助教授、ワシントン大学准教授を歴任。2007年「天才賞」と呼ばれるマッカーサー・フェローを受賞。賞金を元手に、身体面および学習面に課題を抱える子どもたちのためのヨーキーワークス財団設立。2009年共同創業者としてグーグルX立ち上げ。2010年ネストのCTO(技術担当副社長)。その後アップルのヘルスケア部門を経て、 2017年グーグル副社長。 2019年パナソニックに入社し、2020年Yohanaをファウンダー兼CEOとして設立。

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