午前3時起床、育児中の教員5人が語る過酷な現実 仕事の持ち帰りはザラ、毎週土日に出勤する先生も

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石田:本来、それがグローバルスタンダードの教員像ですよね。

D:ただ今年度は、学年会計と特別支援コーディネーターという役割が追加され、空き時間もその業務に費やしたり、1時間近く残業したりしましたね。

石田:今後、担任を持つ可能性はありますか。

D:真ん中の子が小学校に上がるので、4月からフルタイムで担任を持ちます。丸付けの負担は減らそうと思っています。例えば、ある先生はドリルの丸付けはせず、「グループで相談して答え合わせをしてごらん」と促すのですが、そうすると、子どもたちは自然と相談し始めて学び合うんですよね。今の勤務校はGIGA端末の活用が進んでいて、子ども同士で考えさせる場面を設定する先生も多いので、いろいろ学ばせていただき、うまく手が空く時間を作れたらと思います。

石田:根本的な労働環境の改善にはつながらないかもしれませんが、個人レベルで余裕を生み出す余地はありそうですね。Dさんは、メンタルを維持する秘訣などはありますか。

D:育休中に思考や感情の整理術を学んだことや、他分野の仲間と話せるオンライングループに入ったことなどが役立っています。そのおかげで「退職はいつでもできるから、一度復帰してみよう」と思えたし、復帰直後の苦しいときも乗り越えられました。でも、運もあるんですよ。私は環境に恵まれましたが、復帰予定の知人は時短を希望したら、管理職から「代わりの先生を自分で用意して」なんて言われたそうです。

時短がかなわずコロナ禍で負担が増した末の答え

石田:Eさんは、育休から復帰せずに退職されるそうですが、理由をお聞かせいただけますか。

(Eさん)
30代の公立中学校教諭。5歳と1歳の子どもがおり育休中だが、退職の予定。

E:上の子の育休後に、中学1年生の担任として一度復帰しています。その際、異動と短時間勤務の希望を出したのですが、「両方の希望は通らない」と言われました。引っ越した都合で異動を優先してフルタイムで復帰しましたが、コロナ禍も重なり負担が大きかったんですよね。

石田:サポートしてくれるご家族は?

E:ワンオペでした。上の子がよく泣く子でご飯もままならず、朝はおにぎりやパンを握らせて車に乗せ、保育園に送って学校に向かう日々。コロナ禍で検温などの業務が増えたこともあり、午前7時半頃には学校に着かなければいけませんでした。空き時間もほぼなく、急いで午後6時までに保育園に子どもを迎えに行き、毎日仕事を持ち帰っていましたね。

子どもが不安定になってしまったので、帰宅後は一緒に遊ぶ時間を取るようにしたのですが、そこから夕飯やお風呂となるとどうしても午後9時を過ぎちゃう。その後、授業準備や家事をこなし、日付が変わる前に何とか寝るという毎日でした。復帰後1年目に下の子を妊娠したのでまた育休に入りましたが、いろいろ考えて辞めることにしました。

石田:皆さんのお話から、子育て中の女性教員の過酷な労働環境が改めて浮き彫りになりました。今回も家事代行の利用など、負担軽減の工夫についてお話がありましたが、厳しい状況をどう乗り切ればよいのか、次回以降、具体的な解決策も探っていきます。

(構成:佐藤ちひろ)

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石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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