所得が多いほど「出生数増」日本が直視すべき現実 「日本の少子化の元凶は東京にあり」の大誤解

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ここから浮き彫りになるのは、結婚から出産に至る過程の中で、若者が置かれた経済環境によって、「結婚できる/できない」「子を産める/産めない」が決定されるということです。

また、東京と地方との経済環境格差で見落としてはいけないのは、東京には大企業が集中している点です。大企業と中小企業とではそもそも社員に対する福利厚生の充実度も違います。

大企業であれば、住宅手当などや社員の結婚や出産に対しても都度お祝い金が出たり、育児休業などの制度の充実、それに対する周りのサポート機能も豊かでしょう。そもそも、賃上げに対しても積極的にできる余裕もあります。

かつて総合商社の伊藤忠商事の社員の合計特殊出生率が1.9以上であるなど話題になりましたが、それは大企業の社員であるがゆえの環境によります。そもそも同社の平均給与が1600万円近くある時点で、それを一般的な尺度として見ることは適当ではありません。

東京圏と地方で二極化

このままいけば、東京圏の経済的に恵まれた層は結婚して出生数を増やすことができる反面、そうでない地方の層は生涯未婚・生涯子無しで終わるという二極化が生まれます。自治体の子育て支援メニューに関しても、東京と地方では前者のほうが充実しています。

あわせて、少子化対策の予算増額分を社会保障費の値上げによってまかなうという話もでています。これもまた、経済的に余裕のない層ほど大打撃を受けます。日々の生活に精いっぱいで、ますます、結婚や出産どころの話ではなくなるでしょう。

恵まれた人にはより恵みが施され、恵まれない人にはより過酷になっていくように感じさせる懸念もあり、無用の分断も招きかねません。支援のある子育て世帯にとっても、今生まれてくる子どもたちの将来の負担が増えることには変わりがありません。

長い目で見れば、誰にとっても得にならない話で、政府の少子化対策は少子化加速政策にしかならないのではないでしょうか。東京でさえ、出生数の維持に比べて婚姻数は大きく減少しています。この婚姻減は今後の出生数の減少となって顕在化します。

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荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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