アラサーのための戦略的「人生相談」--「ゆでガエル」として生きるほうが、幸せでは?(その1)

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広瀬 一郎

■■第10回 「ゆでガエル」として生きるほうが、幸せでは?(その1)

白石健二・仮名 32歳 公務員

Whyを繰り返し、論理的に考え、戦略的に行動することは、とても大切だと思います。広瀬さんのおっしゃっている方法論を実践すると、自己満足は得られるのでしょうが、組織で浮いてしまって、自分を追い詰めてしまうように思います。

戦略的な思考を実践することは、現実的なメリットがあるのでしょうか? それよりも、組織の空気に合わせて、軋轢など起こさずに生きたほうが、幸せなのではないでしょうか?

* * *

広瀬: そこは本当に悩みどころです。漱石が『草枕』で「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される(中略)とかく世間は住みにくい」と言っていますが、これは今も真実です。

「突出を恐れるな」と格好いいことを言っても、現実に日本の組織で突出すれば、「出る杭は打たれる」ことは多いでしょう。組織内で自己主張して「突出」したり、大同につかない異見を述べたりするのは、「超ハイリスク」ですが、それに見合った「リターン」を期待するのは、従来であれば極めて難しかった。お気楽に「それでも勇気を持ってやるべし」なんて言えなかったのです。

私は昭和30年生まれの、歩く「55年体制」です。「団塊の世代」の次の世代です。「団塊の世代」は、従来型の対応で見事に「逃げ切り」ました。タテマエで、「自己主張せよ」と言っても、本音では「そんなことをすればバカを見る」ことを知っていたのです。

はっきり言えば、彼らは「卑怯(ひきょう)」といえば卑怯でした。学生時代、学生運動を通して、いったんは「タテマエ」を否定したんですから。それなのに、就職が決まると、髪を切り七三分けにした。髪を切ったときに、自分の中の「神」も切ったんでしょうね。自分たちが批判していた「体制」の中枢に、スリ寄っていったわけです。

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