アラサーのための戦略的「人生相談」--「ゆでガエル」として生きるほうが、幸せでは?(その1)

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Yさんが10年以上前に指摘し、藻谷さんも指摘されている「問題の所在」とその「処方」は、ほぼ万人を納得させるに足るほど明白な事実に基づいています(読者の方にも、ぜひご一読をお勧めします。シューカツ中の娘にも、大学の教え子たちにも、「ここに書いてある事実を知らないと、今後の世の中には対応できないよ」と言っておきました。)

私の疑問は、事実がこれほど明確な形で判明しているにもかかわらず、『デフレの正体』が10年に新書として発売されるまで、主要なメディアにおいて、目にしたことがなかったことです。それは必ずしも私の不勉強のためばかりではないことは、この本がベストセラーになっていることで証明されています。

しかも、Yさんも、藻谷さんも、体制側にかなりの影響力をお持ちである人たちです。彼らはこれまでに、政府の委員会などで、発言されてきたはず。にもかかわらず「なぜ、これまでこの問題は放置されてきたのか?」 これに対するYさんの答えは、単純。「連中には根性がなかった」でした。納得。……だけど、情けない。「ゆでガエル」のたとえ話を思い出しますね。

神経言語プログラミング学者のベイトソンが、「ゆでガエル」という西欧の古くからある警句を「人間の適応過剰」という観点から説明しました。熱湯に入れたカエルは、熱くて飛び出すが、水の入った鍋にカエルを入れ、熱を加えていったら、カエルは熱の変化に適応してしまい、逃げる機会を逸し、気がついた時は熱湯でゆでられて死んでしまう、ということです。

「危機」には何となく気がついているけれど、「まだいいだろう」と思っているうちに、取り返しのつかない事態になってしまうことって往々にしてありますよね。「ああ、あの時に手を打っておけばなあ」なんて悔やんでも後の祭。言わば、これが「適応のジレンマ」です。

現状を肯定し、組織内で一切の自己主張をせず、耐えた結果、本人は役員に昇進するかもしれません。しかし、役員会がそんな奴ばかりで構成されていたら、その会社自体が没落するのは明らかです。

組織内での評価を気にしている人を見ると、私は「ゆでガエル」の例え話を思い出してしまいます。団塊の世代は、熱湯になる前に鍋から出てしまいましたね。さて、あなた方アラサーはどうしますか? それでも、現状を肯定する「いい奴」を続けていきますか? ここは考えどころでしょうね。


ひろせ・いちろう
 1955年生まれ。東京大学法学部卒業。80年、電通入社。トヨタカップを含め、サッカーを中心としたスポーツ・イベントのプロデュースを多数手掛ける。2000年に電通を退社し、スポーツ・ナビゲーションを設立。その後、独立行政法人経済産業研究所の上席研究員を経て、04年にスポーツ総合研究所を設立し、所長就任。江戸川大学社会学部教授を経て、多摩大学の教授として「スポーツビジネス」「スポーツマンシップ」を担当。著書に『Jリーグのマネジメント』『スポーツマンシップ立国論』など。現在東京と大阪でスポーツマネジメントスクールを主宰し、若手スポーツビジネスマンを育成している。
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