「大連立構想」は政治の死の第一歩か、再生への入り口か

「大連立構想」は政治の死の第一歩か、再生への入り口か

3月19日、菅首相から谷垣自民党総裁への入閣要請が「幻の大連立」に終わるという出来事があった。菅首相の延命工作と見た自民党側から「火事場泥棒」「どさくさ大連立」という批判が噴出した。

ところが、火種は消えていなかった。菅首相はいまも意欲的だ。民主、自民両党が震災対策の補正予算や復興協議機関、閣僚増枠などで話し合いを持ち、歩み寄りを示せば示すほど、大連立の機運が高まる。現在、大震災後の政治休戦に加え、統一地方選で国会が事実上、休止中だが、4月後半に動きが本格化する気配もある。

大連立については、民主党では、沈黙する反菅陣営は別にして、おおむね前向きだ。一方、自民党は土俵際まで菅首相を追い詰めていただけに、慎重論が根強いが、大震災で解散が遠のき、早期の政権復帰は大連立だけという見方も広がり始めた。

ただし、大きな壁がある。自民党は大連立と菅退陣をセットで要求しそうだが、菅首相は絶対に飲めないだろう。仮に民主党がその壁を乗り越え、大連立実現となれば、その先はどうなるのか。

国民が容認するのは「危機克服の救国大連立」だから、期間限定でなければ理解を得られない。常識的には秋の臨時国会終了までだろう。

だが、新体制ができ上がると、両党が大与党政治の旨みに溺れてずるずると無期限で大連立を続ける恐れがある。そうなれば「政党政治の崩壊」「民主主義の死」だけでなく、「政治の危機」が現実となりかねない。

そのとき、民主主義への絶望が広がり、日本全体がポピュリズムや全体主義に傾斜する危険性もある。反対に「初の大連立」の経験を踏まえ、新しい対立軸に基づく政界大再編で政党政治の再生を、と望む声が日本の政治をつくり変える原動力になる可能性がある。「経済立国」「安全国家」を支えてきた神話の崩壊によって、政治も根こそぎの構造変革にさらされ、再生への模索や実験が始まるかもしれない。

大連立構想がその第一歩となるかどうか、選択を迫られる政治家と国民の両方がいま戦後最大の試練にさらされている。


塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数

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