これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く

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実際、構造的に流動性の低い資産(不動産)を抱える不動産ファンドの性質を踏まえれば、「解約のハードルを上げる」というのは本質的な一手ではあり、すでにいくつかの国では導入されているという。こうした規制傾向は今後、強まるものだろう。

しかし、目下、金融市場が注目するのは、”商業用不動産(CRE)危機”が注目される中、政策金利がどのような影響を被るのかだ。流動性危機におびえるファンドの挙動によって資金調達コストが押し上げられ、それがシステミックリスクに直結する可能性が見えている以上、中央銀行が何もしないことは考えにくい。

上述したような不動産ファンドの運営にまつわる制度的な修正は中長期的に進めていくのだろうが、それと同時に短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか。

問題提起は利上げ幅縮小の布石?

現状ではCRE危機というフレーズが市民権を得るほどの事態にはなっていない。しかし、仮にそうなってしまえば、眼前のインフレを犠牲にしてでも利上げ路線の急旋回(例えば0.5%利上げから0.25%の利下げへ、など)を強いられるリスクはある。政策金利の急変動は市場にボラティリティをもたらし、要らぬ混乱を招く。

ECBが今回、このタイミングでCRE危機にまつわる問題提起を行ったということは、極めてわずかではあるが、引き締め路線のブレーキを踏む意図を持ちつつあるということなのかもしれない。

5月4日の政策理事会では0.5%から0.25%への利上げ幅縮小に注目したいところである。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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