これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く
特に、商業用不動産市場における不動産ファンドの存在感が大きいフランス、オランダ、アイルランドでは「オープンエンド型投信を抱えつつ現金バッファが小さい国」であるとしてその脆弱性が指摘されている(反対にイタリアやポルトガルが現金バッファの大きい国として紹介されている)。
実際、商業用不動産市場の雰囲気が悪くなるのに従って不動産ファンドへの資金流入は細っており、すでにオランダなど一部の国では大幅な純流出に直面している。不動産ファンドを取り巻く環境が一変しているのは間違いなく、ショックに対して脆弱性が増している状況が読み取れる。
一連の金融引き締めや3月以降続いている国際金融不安は、商業用不動産市場やそれを主戦場とする不動産ファンドにとって「泣きっ面に蜂」ともいえる動きであり、依然として利上げや量的引き締めを政策オプションから外せないECBは大きな葛藤を覚えていることだろう。
解約ストップは逆効果
多くの不動産ファンドが流動性のミスマッチに備え始めれば、資産売却と資金調達が盛り上がることになる。それは資産価格の下落と資金調達コストの上昇につながる。
ECBは今回の論説の結びとして考えられる政策対応を示している。現状、オープンエンド型ファンドには解約請求の停止という手段が与えられているものの、これはファンド経営の不安定化を宣言するようなものであり、いわゆるスティグマ(汚名)リスクを伴う。
よって、ファンド出資者に対しては解約コストや最低保有期間の導入、解約通知期間の長期化など、多様な流動性管理手段(LMT:Liquidity Management Tool)の導入をECBは提唱している。また、不動産ファンドに関してはそもそも解約が容易なオープンエンド型ではなくクローズド型しか認めないといった規制面からのアプローチもECBは言及している。
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