松たか子、舞台より『ロンバケ』選んだ18歳の選択 「今となっては、ああ、それでよかったのかな」
── 松さんの中で、舞台と映像は全然違うものという感覚ですか?
松:取り組む姿勢はあまり変わらないです。舞台の「今度こそいちばんよくなるように」という気持ちは、映像の「今日も1回1回終わらせてOKをもらうぞ」という気持ちと同じで、どちらも一生懸命やるだけなので。そのコツコツ進んでいく感じは一緒な気がします。
ただ、決定的に違うのは、舞台(での自分)というのは毎日違って、できなかったり、今日できても次の日できるとは限らなかったりすることです。
映像は、監督の「オッケー」をもらえたら、あとはもう監督にお任せし、それを重ねていくものなので。自分がどう思っても撮り直せないと思うぶん、「あのシーン、どうだったかな……」と(不安に)思うと、それが映ってしまうような怖さもあります。
その意味では、映像はよりスピードが速い俊敏なイメージで、舞台はより持続力が鍛えられるものという気がします。
自分の想像力の中だけにおさまっているのはもったいない
── その後、ドラマの仕事もどんどん増えるなか、舞台への気持ちはどう変化していきましたか?
松:舞台に関しても、「ロンバケ」の少しあとに、改めて舞台のお芝居の勉強をちゃんとしたいな、修行をしたいなと思う機会が自分に訪れたんです。それで、20代の頃は、年に1本は舞台をやりたいというふうに、仕事の配分を決めようとしていました。
けれど、30代、40代と経験を重ねるにつれて、そうそう計画どおりにうまくいくものではないかもなぁと思いはじめて。それよりも、出会いのタイミングと、「やりたいな」「これはやるべきかな」という自分の思いに正直でいたほうがいいと思うようになったんです。
だから今は、あまり配分も考えず、巡りあわせに身をゆだねていて、その流れの中で松尾さんとのコントも始まったという感じです。
── 結果としてそのほうが面白い仕事に出会える?
松:そうですね。今回の「30分強の女優」も、自分では思いつかない世界を考える人がいて、その世界に呼んでもらえる驚きと、逆に、私で大丈夫ですか!? というドキドキがありました。でも、そこに飛び込んだら面白かった、ということの繰り返しです。
ならば、自分の想像力の中だけにおさまっているのはもったいないから、その世界に行ってみたいなと思ったら、行けるように努力をする。それはずっと変わらないような気がします。