松たか子、舞台より『ロンバケ』選んだ18歳の選択 「今となっては、ああ、それでよかったのかな」
── 松さんにとって、松尾さんはどんな方ですか?
松:松尾さんは、作家で演出家で、役者さんでもありますよね。今回も、松尾さんご自身セリフも多いし動きも大変で、お互い、演じる側として一生懸命やっている者同士ではあったのですが、そう思っていると急に、作家であり演出家のすごくシビアに物事を見る目になるときがあって。
ある瞬間、その引いた目になるときはドキッとするし、「あ、怖い」と思います。でもその両方があるから魅力的で、油断ならない相手という感じですね。
選択した状況に流されはじめ、環境も変化していった
── 松さんは、今年でデビュー30周年を迎えられますが、率直なお気持ちは?
松:30年……ですね。いやぁホントにお仕事をくださる方がいてくれたおかげで、今日までこられたなぁと思います。私の場合は出所がはっきりしすぎていて、「で、だからなんなの?」っていうところからのスタートだったので。そうした(役者の家系という)背景があってのチャンスもあれば、それとは関係のない方たちと出会えたこともよかったし。今回の松尾さんみたいに、あきらめずに声をかけてくださる方々がいてくれたおかげで、つながってきたのだろうと思います。
── 10代後半でのデビュー以降、傍からは順調にキャリアを重ねてきた印象ですが、ご自身はどう感じていますか。
松:ある意味、選択した状況に思いがけず流されはじめたことで、環境が変わっていったところがあったと思います。最初は、舞台でちゃんと立てる人になりたいなぁと思ってお芝居を始めたのですが、18歳のとき、映像をやるか、舞台をやるかを選択する局面があったんです。
私は、初めて連続ドラマに出たのが「ロングバケーション」というドラマだったのですが、そのときにちょうど舞台のチャンスもあって、私は当然舞台をやるつもりでいたんですね。けれどなぜか……父が言ったか、母が言ったのか定かに覚えていないのですが、「(ドラマは)今だけのチャンスかもしれない」みたいなことを親に言われたんです。
で、「ああ、そうなの?」と思って、テレビの流儀も知らないまま、「まぁでも、お芝居をする場所かぁ」ぐらいの感覚で出させていただいて。当時の私は、“月9”の読み方すら知らず、「げっく?」なんて言っていたし(笑)、実際、ドラマの現場は舞台以上に未知の世界でした。
でも、その現場でいろいろ教えていただけたのは、ホントに恵まれていたなと思うんです。もしあのとき、タイミングが違ったら、また別の進み方をしたかもしれないし、出会った人も変わってきたかもしれない。今となっては、ああ、それでよかったのかなと思えるポイントですね。