パリがゴミだらけ、仏年金改革「反対スト」深刻背景 受給年齢の引き上げに怒りを爆発させる理由

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実は退職年齢をめぐっては、左派のミッテラン政権が1982年に60歳に引き下げて以来、何度も引き上げようとして、過去にはサルコジ政権がようやく62歳に引き上げた経緯がある。退職年齢の引き上げは、昨年の大統領選でのマクロン氏の公約だった。

年金改革法案は可決されたが、国民の不満は過去になく高まっていることから、マクロン政権は改革案の正当性を証明するため、憲法評議会にかけるとしている。また、与党や与党寄りの政党代表との話し合いも続けるとしている。

ただし、野党との意見交換は実現しそうにない。その野党は法案が成立しても抗議行動を続けることを宣言している。もともと年金を含む社会保障税負担が大きいフランスでは、年金改革で受給年齢の引き上げ、受給額の減少を受け入れない労働者が非常に多いことが、抗議運動を継続可能にしている。

抗議活動が先鋭化する懸念も

今後、抗議行動が精鋭化する懸念もある。実際、山積みされたゴミへの放火も始まっている。改革を支持した議員の事務所も襲われたりしている。ゴミ収集車やガソリン運搬車の移動阻止も行っている。

働くことを人生の主目的に置いていないフランス人は多いので、この問題が後を引く可能性は高い。同時に高齢化が進むフランスでは、年金制度をめぐり、さらなる議論が巻き起こる可能性もある。とくにリタイヤした人々は老後を豊かに過ごすことが、国の経済にいい影響を与えると主張しており、フランスの議論からは目が離せない。

安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)

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あべ まさのぶ / Masanobu Abe

パリを拠点にする国際ジャーナリスト。取材国は30か国を超える。日本で編集者、記者を経て渡仏。創立時の仏レンヌ大学大学院日仏経営センター顧問・講師。レンヌ国際ビジネススクールの講師を長年務め、異文化理解を講じる。日産、NECなど日系200社以上でグローバル人材育成を担当。

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