パリがゴミだらけ、仏年金改革「反対スト」深刻背景 受給年齢の引き上げに怒りを爆発させる理由

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実は、2018年に始まった反政府デモの「黄色いベスト運動」でも、デモ隊に紛れ込んで警官や憲兵隊に暴力を振るい、公道に面した店の商品の略奪やバス停の破壊行為を行う、通称「ブラックブロック」と呼ばれる暴力グループに警察は頭を悩ませている。

全身黒づくめで抗議内容には興味がなく、暴力だけが目的の同グループは、当局によると3月23日のデモでは約1000人が確認された。

デモ隊の暴力的エスカレートを嫌い、この時期を選んで騒乱を避け、国を出てバカンスに出掛けるフランス人の大きな理由の1つになっている。パリのシャンゼリゼ通りのレストランのオーナーの1人は、「あのような暴力はフランス人が考える抗議運動とはまったく違う。あれは非合法の犯罪行為で受け入れがたい」と非難している。

できるだけ短く働きたい

30年以上、フランスを見てきた筆者の立場から言うと、「生活のためには働くしかないが、働くことに大きな意味は感じない。できるだけ短く働き、できるだけ高い報酬を受け取り、プライベートの生活を楽しみたい」という人生観を持つフランス人が少なくない。個人や組織の利潤追求や欲望を追求するアングロサクソン型(米英型)資本主義にも抵抗を示す。

23日の抗議デモに参加した1人は「政府はわれわれを死ぬまで働かせる気だ」と語気を強めた。フランス人の平均寿命は男女ともに80歳以上なことを考えれば、64歳は死ぬまで働かせるという年齢とはいえない。ヨーロッパ全体では65~67歳に年金受取退職年齢を引き上げる流れにある。

にもかかわらず、あくまで働きたくないフランス人には長く働き続けることは、一般的に拷問のように感じられる。

定年退職後に仕事を続けるフランス人は非常に少なく、若いときから定年退職後の生活設計を練っている人が多い。

例えば、パリなど北部の住民は南フランスへの移住に意欲を示す人が多いし、旅やボランティア活動を楽しむ人も多い。だから1年でも年金受給年齢を引き上げるとなると大騒ぎになる。

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