日本では、なぜ「長時間労働」がはびこるのか 欧州赴任中は早く帰宅、帰国後は残業漬け
「少子化社会対策大網」が、3月20日に閣議決定された。そこでは、2020年までに「男女がともに仕事時間と生活時間のバランスが取れるように見直す」と、働き方の改革を目指す方針が明記された。
具体的には、6歳未満の子どもを持つ男性の家事・育児関連時間を、2011年の1日当たり平均67分から、2020年に2時間30分まで延ばすとする数値目標が設定された。
だが、フルタイムの男性雇用者のうち、平日に1日10時間以上働く人の割合は、1976年時点の2割弱から4割を突破。労働時間は増加傾向にあり、このままでは十分な家事・育児時間を捻出できそうにない。
働き方は環境で変わる
日本的雇用慣行の中で、企業では外国の企業に比べ、成果や能力よりも、残業時間が多いことで評価されるという“空気”が醸成された。実際、内閣府が2014年に実施した「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」では、残業時間が長い人ほど自らの残業を上司がポジティブに評価していると答えている。
早稲田大学の黒田祥子教授と慶応義塾大学の山本勲教授が欧州への転勤者を対象に行った調査によれば、職場環境が変わることで同一個人でも働き方が大きく変わるという。日本で長時間働いていた人でも、欧州赴任後は労働時間が減少し、有給休暇の取得日数は大幅に増加したのだ。
「日本の企業には、欧米のようなジョブディスクリプション(職務ごとに求められる業務内容の記述)がない。一人ひとりの業務範囲は不明瞭で権限も明確でなく、頑張る人ほど仕事が集中しやすい傾向にある」(黒田教授)。その人が生産性の高い仕事をしているかどうかを評価するシステムもなく、「頑張り」の度合いで評価が決まる。
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