日本では、なぜ「長時間労働」がはびこるのか 欧州赴任中は早く帰宅、帰国後は残業漬け

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多くの欧州赴任者は「周りがみんな早く帰る環境にいると、自分も効率的に仕事ができるようになった」と言う。が、「ではその仕事のやり方を帰国後も自社に広めてください」と黒田教授が促すと、全員が「それは無理です」と口をそろえたという。

個人がどれだけ「長時間労働をなくしたい」「効率的に仕事がしたい」と願っても、自分一人で変えるのは難しい。時短勤務制度を利用している子育て中の女性社員が、どれだけ効率的に仕事をこなしても、早く帰ることに後ろめたさを感じざるをえないというのも、そんなところに理由がありそうだ。

ワーク・ライフ・バランス施策の一環として「ノー残業デー」を設定している企業も少なくない。だが、強制的に会社を追い出されても、多くの社員は残った仕事を自宅でこなしているのが実状だ。

早朝勤務を促した伊藤忠商事

そんな中、伊藤忠商事は2014年から早朝勤務を促すことで、労働時間を減らす取り組みを行っている。2013年秋に実施したトライアルの結果、総合職1人当たりの残業時間は月4時間減ったという。

トップ自らが旗を振り、会社全体で制度導入を進めたことが奏功した例だ。とはいえ、まだ1人当たりの残業時間は月45時間であり、長時間労働が完全に是正されたわけではない。

一方、小回りが利く中小・ベンチャー企業やNPO(民間の非営利組織)法人の中には、成果を上げている例がある。業務のやり方を見直し、時間ではなく成果で評価される風土を作ることで、労働時間を短縮させている。

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