EUの「ウクライナ支援」継続に立ちはだかる課題 国家間の世界観の相違と市民の間で進む関心低下

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他方で、ハンガリーのこうした言動の背後には、世界観を巡る重要な問題を孕んでいることにも留意しなければならない。すでに触れた年頭演説において、オルバーン首相は「ウクライナの戦争は、善と悪の軍隊の間の戦争ではない」「われわれは友を作り続けたいのであり、敵を作ることは望んでいない」と述べた。自国の目先の利益を最優先に置いたオルバーン首相の「親ハンガリー」(ハンガリー・ファースト)の考えによる発言であろうが、それは明らかにEUが示す世界観とは異なるものである。

ロシアは、国際社会が戦後築き上げてきた国際法や国際的規範に基づいた国際秩序を崩そうとしている。それゆえ、ロシア・ウクライナ戦争はこれまでの他の戦争と比べても、善悪が極めて明確な戦争である。また、「法の支配による秩序」から「力による秩序」へ国際秩序が変わってしまうことについては、欧州の中小国にとっては歓迎すべきことではない。それにもかかわらず、EU加盟国の中でロシアの侵略に対して、まるで「黙認」するかのような発言をする指導者がいることは、懸念すべき問題だ。

市民の戦争への関心低下も

加えて、侵略側のロシアと侵略されたウクライナの双方の条件が折り合わず戦争終結の見込みが見えない中で、欧州市民の戦争に関する関心の薄れとそれに伴うウクライナ支援の気運の低下も、今後深刻な問題となるであろう。

市民の関心低下を示す傾向は徐々に現れ始めており、例えば、仏調査会社IPSOSが昨年11月末から12月上旬にかけて28カ国(うちEU加盟国は9カ国)を対象に実施した調査によると、「ロシアのウクライナ侵攻に関するニュースを詳細に追っている」と回答した人の割合が、ドイツとフランスでそれぞれ5%減少、ポーランドも2%減少と各地で減少傾向がみられた(世界28カ国では2%減少)。世論の関心低下が指摘されて久しいグローバルサウスのみならず、欧州でも減少傾向がみられることは注目に値する。

また、欧州各国が受け入れを行ってきたウクライナ難民への支援についても、全EU加盟国を対象としたユーロバロメータ調査の結果では、「戦争から逃れてきた人々をEUに迎え入れる」という主張に賛成した回答を合わせた数値は88%であった。依然として高い数値ではあるが微減(-2%)という結果になっている。

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