私たちが当たり前に「コーヒーを飲めなくなる日」 種の脆弱性と、環境の変化がもたらすリスク

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「リベリカ種」はフィリピンやマレーシアで生産されていますが、生産量が非常に少なく、日本ではあまり馴染みがありません。

基本的に世界に流通しているのは「アラビカ種」と「ロブスタ(カネフォラ種)」の2つと考えてOKです。

ただ、実はこの3種以外にコーヒー業界で大きな話題になっている種があります。それが「ユーゲニオイデス」という種です。

ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(WBC)2021年大会では、3位までに入賞した競技者全員がユーゲニオイデスを使っており、「これからのスペシャルティコーヒーのトレンドになるのでは」と注目が集まっているのです。

実際、ユーゲニオイデスで淹れるエスプレッソを私も飲んでみましたが、非常に美味しく感じました。コーヒー特有の酸味や苦みが不思議となく、甘いのです。初めて飲んだ人は驚くと思います。

ユーゲニオイデスは、アラビカ種の祖先だと言われています。66万年以上前のこと、アフリカ最大の湖、ビクトリア湖からその北西に位置するアルバート湖のあたりの高地に、たまたまユーゲニオイデスとロブスタの両方が自生可能なエリアがあり、異種交配が起きてアラビカ種が生まれたというのです。

そんなユーゲニオイデスですが、栽培が難しく少量しか生産されていません。ですから購入できる人が限られています。2021年のWBCの結果を受けて、数年先まで売り切れになってしまっています。

数年前まではあまり知られていなかったユーゲニオイデス。品種改良を通じて人間にとって好ましくなっていくというのが世の常にもかかわらず、古い種に注目が集まったというのはとても興味深いです。

種の脆弱性

気候の影響を受けやすいコーヒー栽培は簡単ではありません。

標高の高い土地で栽培されるコーヒーノキにとって、もっとも恐ろしいのは「霜」です。

たとえば世界一のコーヒー生産量を誇るブラジルでは、6~8月の冬の時期に冷たい雨風が吹いて霜が降りることがあります。

1975年の7月、急激な気温低下がブラジルのコーヒー農園を襲い、たった一晩で壊滅的な被害を与えたことがありました。その年の収穫は終えていたものの、木が枯れてしまうと翌年に実をつけることができません。

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