私たちが当たり前に「コーヒーを飲めなくなる日」 種の脆弱性と、環境の変化がもたらすリスク

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コーヒーは先物取引なので、1976年を待たずして、霜害のニュースを受けてコーヒー豆の価格は一気に高騰。5倍まで価格が跳ね上がりました。最大の生産国であるブラジルでのダメージから、大幅な供給減が予測されたのです。結果としてやはり、1976年の生産量は半分に落ち込みました。

近年も毎年発生する異常気象の影響などにより、収穫量と価格が常に変動しています。

加えて、もちろん輸入品ですから、最近進んでいるドル高円安といった為替相場の影響も受けます。円安により日本の購買力は落ち込んでおり、今後が不安視されるでしょう。

アラビカ種はサビ病に弱い

話をコーヒー栽培に戻すと、コーヒーノキも生き物ですから、自然災害とは別に、病気のリスクがあります。

もっとも恐れられている病気が「サビ病」です。サビ病は、カビの一種である「コーヒーサビ病菌」による伝染病。サビ病にかかると、コーヒーノキの葉にオレンジ色の斑点が広がっていきます。そして、葉が落ちて光合成の機能を失い、2~3年で枯れてしまいます。「鉄サビ」のような斑点は樹木全体に広がるだけでなく、木から木へと伝染します。農園ごと全滅してしまうのです。

この病気が最初に見つかったのは1867年のスリランカ(当時はイギリス領セイロン)でした。伝染病の常として、撲滅は難しく、数年のうちにスリランカ全土に広がります。1868年にはインドでも発生し、インド中のコーヒーノキが壊滅的なダメージを受けてしまいました。

コーヒー栽培が世界に広がっていた中で、スリランカとインドも栽培に乗り出したものの、運悪くすぐに病害に見舞われてしまったわけです。これによってスリランカはコーヒー栽培をあきらめ、紅茶に切り替えました。現在までインドやスリランカが紅茶に注力しているのは、植民地として治めていたイギリスの嗜好も理由にありますが、こうした背景もあるのです。

三大栽培原種の解説でもお伝えしましたが、とくにアラビカ種はサビ病に弱く、いまも世界のコーヒー生産者たちの悩みの種です。

一方で、病気に強いロブスタは味に劣るため、研究者たちは病害に強い種を作るべく、アラビカ種とロブスタを掛け合わせるなど努力しています。しかし、道のりはなかなか険しいようです。

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