「妊娠中絶」手術か薬かの問題よりもっと重要な事 「飲む中絶薬」承認に対するパブコメ1万2000件
人工妊娠中絶の飲み薬「メフィーゴパック」について、厚生労働省は3月24日、薬事分科会で予定していた審議を見送った。2月末まで募集していたパブコメが約1万2000件寄せられ、分析や対応の整理に予想以上に時間がかかっているためだ。改めて翌月以降に審議するという。
国内の中絶方法はこれまでは手術に限られていたが、飲む中絶薬が承認されれば、新たな選択肢が加わることになる。手術と飲み薬による中絶の方法にはどんな違いがあるのだろうか。気をつけるべきことはどんなことなのか。
妊娠初期の中絶を可能にする薬
今回、審議の対象となっているのは、イギリスの製薬会社が開発した経口中絶薬。妊娠継続に必要なホルモンの働きを抑えるミフェプリストンという薬と、子宮を収縮させるミソプロストールという薬を組み合わせて服用することで、妊娠初期(妊娠9週、63日以内)の中絶を可能にする。
「メフィーゴパック」はミフェプリストンとミソプロストールを合わせた製品名。基本的には薬局やドラッグストアなどではなく、医療機関で処方される薬となる。
臨床試験では、ミフェプリストン1錠を服用し、36~48時間後の状態に応じてミソプロストールを4錠服用すると、24時間以内に約9割の人が中絶を完了した。
中絶とは子宮内の胎児を子宮の外に出すこと。従来の妊娠初期の中絶手術には、器具を子宮内に挿入して妊娠組織(脱落膜・絨毛膜・羊膜)をかき出す掻爬(そうは)法と、専用の管で吸い出す吸引法がある。関東中央病院(東京都世田谷区)産婦人科医長の稲葉可奈子医師によると、日本では吸引法が主流になっており、吸引法で妊娠組織が全部出てこないときに掻爬法を併用することもある。
「基本は吸引法ですが、その場の状況や症例に応じて併用することもあります」(稲葉医師)という。
世界で少なくとも65カ国・地域で使われている経口中絶薬。世界保健機関(WHO)は「掻爬法は安全性に劣る時代遅れの中絶方法」とする一方で、経口中絶薬については「安全で有効性が確認されている」として推奨している。が、稲葉医師はこう指摘する。
「確かに、衛生的に不十分な発展途上国などでの中絶手術は、感染症などの合併症が起きる率も高いため、それに比べれば経口中絶薬は安全というのはその通り。しかし、日本の中絶手術の技術は高く、安全に行われている。手術というと非常に負担が大きいものと思われがちですが、麻酔で眠っている間に15分ほどで処置は終わります」
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