今では事業も軌道に乗り、社会的なミッションをビジネスに変える若手起業家のひとりとして注目される安田さんですが、起業をするつもりが最初からあったわけではありません。冒頭にあるとおり、最初のキャリアである商社では1年目で会社に行くことができなくなり、引きこもりになってしまうという、つらいスタートを切りました。
Warm Heart:挫折経験が挑戦の原点に
「うつになってからなかなかよくならず、苦しみました。失業して引きこもっている中でキャリアが立ち止まっているように見えて、ますます自分はダメな人間だという負のスパイラルに入っていきました。貯金は減り金銭的にも厳しくなっていく。そんなときに見つけたのが、社会企業家を支援する助成金の話だったのです。そこで、自分の高校時代の人生経験を基にしたビジネスプランを作り上げて出したら、これが通った。自分の思いをカタチにできるということもうれしかったのですが、これで何とか食っていける、ということも、正直に思いました」
今では社会起業家として取り上げられることが多くなった安田さんのスタートが、困窮を理由に、わらをも掴む思いで獲得した助成金からだった、というのも興味深い話です。
何はともあれ、これがきっかけで安田さん自身の状態もよくなっていきます。というのも、このビジネスプラン自体が安田さんの人生経験をもとに作られたものであり、それが彼自身の自己肯定感へとつながっていったからです。
「高校生のときはまったく勉強もせず、学校も行ったり行かなかったりで、家出を繰り返すヤンキーでした。しかし何も考えないまま高校3年生になったとき、周りを見て本当にマズイなと。バイトすらも、3か月も続けられない。このままだとまともな大人にならない。そして、変わろうと決心しました。大学に行こう、行くならいちばん難しい大学に行こうと。そこまではよかったのですが……」
NPO法人キズキの原点は、安田さんの高校時代の経験が始まりになっています。元々、安田さんはヤンキーで家出少年。学力は地元の下位校で、その中でも彼の成績はさらに底辺。そんな安田さんが一念発起し、東京大学を目指しました。それでストレートに合格することができれば最高の美談だったのですが、ここから学力の壁にぶち当たります。高校の授業もまともに受けていなかったどころか、中学もまともに行っていなかった安田さんの学力は、大学受験レベル以前の問題だったのです。
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