なお、データについては3月改定されたばかりのECBスタッフ見通しがあり、ここではユーロ圏のインフレ率が2023年に+5.3%、2024年に+2.9%と年内の利上げ継続が支持される仕上がりとなっている。
しかし、技術的な問題として海外経済見通しは2月15日、域内経済見通しは3月1日にカットオフ(締め切り)日付が設定されている関係でクレディ・スイス(CS)問題はもちろん、シリコンバレー銀行(SVB)やシグネチャー銀行の破綻にまつわる混乱が予測に織り込まれていない。ゆえに予測値に不透明感が残ることは不可抗力であり、2月時点のようなコミットメントが出せないのは理解できる。
政策金利にまつわるガイダンスが削除されたことで、今後は一段とインフレ見通しの分析が重要になる。この点、特に注目する要素として、3つの変数が重要であると述べており、それが①経済・金融情勢にまつわるデータ、②基調的なインフレ動向、③政策効果の波及経路だとしている。
インフレとの戦いを止めることはない
筆者はユーロ圏消費者物価指数(HICP)がコアベースで加速し続けていることが利上げ路線の正当性を担保していると考えてきたが、これが②の論点となる。会見でもこれが減速しない限り、利上げを止めないつもりなのかという質問が見られている。
この点、ラガルド総裁は「インフレの基調的な要素が上がり続ける限り、インフレとの戦いを止めることはない(as long as we see underlying components of inflation going up, this is not going to stop our fight against inflation)」と断言している。
当面のECBウォッチは何を置いてもコアHICPを注視することが最優先事項になっていると考えるべきだろう。そのうえでサービス物価や賃金などの挙動もチェックすることが、ECBの認識する「基調的な要素」をつかむことになりそうである(ラガルド総裁は会見中、コア指数以外で注目すべき物価項目としてサービスに言及している)。
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