第2次世界大戦の前のクルマは、前輪をサイクルフェンダーで覆う古めかしい造形であった。たとえば戦前の設計を基本とするフォルクスワーゲン「タイプ1」(通称ビートル)の姿がその一例となる。戦後、客室と一体化した造形でフロントフェンダーが前輪を覆う、今日に通じる外観が生まれる。ジャガー・マークⅡは、戦前の姿と戦後の新しさを融合し、なおかつ全体として一体感のある丸みを生かした優美さを備えていた。エンジンは、それまでのスポーツカーづくりから生まれた高性能仕立てだった。
美しさと速さを兼ね備えたジャガー・マークⅡは、創業者であるウィリアム・ライオンズが信条とした「美しいものは売れる」を体現した1台といえるだろう。性能ではドイツ、合理性ではフランスというそれぞれの国柄にあふれたクルマの特徴を持つ欧州で、英国車を代表するジャガーはつねに優雅さをたたえてきたといえる。
マーチとともに歩んだ30年の歴史
日本のバブル経済が崩壊し、新車といえども原価低減による安さが体感される時代に、2代目マーチという優れた商品性に英国風の優雅なおしゃれさを追加したのがビュートといえる。消費者は、大手自動車メーカーの信頼と、アメリカのカスタムカー文化を採り入れた光岡自動車の挑戦が合体したビュートに目を奪われたはずだ。バブル崩壊で停滞機運のあった新車市場に、ひとつの明るい話題を提供した。
そしてビュートは、30年という永い歴史を刻み続けた。
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