菊間千乃さん「弁護士」転身後の約11年を振り返る 「弁護士の世界には思わぬ仕事が広がっていた」
職業によって仕事の内容はさまざまですが、どんな仕事も相手があることなので、相手に対して心を込めるというところは、大事かなと思っています。
例えば、弁護士の仕事の一つに、代理人として裁判期日に出たあと、依頼者に対してその内容の報告をする「期日報告書」の作成があります。
新人の頃の私が担当したある案件の依頼者は、80代の方でした。事務所には期日報告書のフォーマットがあったのですが、その書式ではフォントが小さくて、ご年配の方は読みにくいかなと思ったんです。
それでフォントを大きくし、行間も空け、書式を変えて報告書を作成しました。
そうしたら、「こうやって読み手のことを考えて書類を作った弁護士はいないよ。菊間さんすごいね」とボスが驚きながら喜んでくれて。実際クライアントさんも、読みやすいと喜んでくださいました。
当時の私は新人で、知識や経験では先輩にかなわない。でも、「相手に対して心を込めて仕事をするときちんと伝わるのだ」と思えたことは自信になりました。
メールを出す、電話をかけるといった日常の仕事も、そこに一つ心を込めることはできるはず。「与えられた仕事」「ルーティンの仕事」と思っていては、そこで終わり。
どのような仕事であっても、その先を考え、心と心が通う仕事を意識することが、自分を成長させることになるのだと思います。
11年前は「元アナウンサー」と言われるのが嫌だった
前回の取材で私はこう言いました。
実は11年前にインタビューを受けた頃は、「元アナウンサー」と騒がれることがすごく嫌だったんです。
「法曹界の皆さんからは『お手並み拝見』と思われているだろうから、まずは弁護士として一人前になるんだ」という気負いもあったと思います。
なので、テレビ出演の依頼もずっと断っていました。
弁護士になった当初からお声掛けはいただいていましたが、お引き受けするようになったのは7年目ぐらいから。
ある程度経験を積んだ頃に声を掛けていただき、「じゃあやってみようかな」と自然に思えました。ようやく肩の力が抜けたなと思います。
今でもネットニュースの見出しや講演会には「元アナウンサー」と必ず付きますが、もう気になりません。
それに、私がアナウンサーだったのはもはや過去のこと。
「菊間さんは昔すごいアナウンサーだったんだぞ」なんて、一緒に仕事をしているTBSの安住(紳一郎)さんがわざわざ若いアナウンサーに説明をするくらいです(笑)
アナウンサー歴は13年弱で、弁護士歴は12年目。もうすぐ弁護士のキャリアの方が長くなりますから、アナウンサーだったことはますます過去になっていくでしょう。