ニューヨーク州当局も3月12日、同州地盤のシグネチャーバンクの事業停止を決めた。
シグネチャーバンクは、暗号資産(仮想通貨)関連企業との取引で有名な銀行で、資産規模は2022年末時点で1103億ドル(約15兆円)に達していた。だが、昨年11月に起きた暗号資産交換業大手のFTXの経営破綻以降、同じく暗号資産関連企業に特化したシルバーゲート銀行の自主清算や今回のSVB破綻を受けて信用不安が高まり、預金流出が加速していた。
週末にかけてのFRB・政府の動きも速かった。アメリカ財務省とFRB、FDIC(米連邦預金保険公社)は金融市場が開く前の3月12日に共同声明を発表。
通常の預金保険で保護される1口座当たり最大25万ドルを超えて、すべての預金を完全に保護する方法を承認したと説明。SVBとシグネチャーバンクの双方に適用されるが、これにより、預金者の増幅する不安を鎮め、新たな銀行取り付け騒ぎを抑え込む考えだ。
SVBの破綻から想起されるかつてのS&L危機
この措置は、「銀行タームファンディングプログラム(BTFP)」と名付けられ、アメリカ国債やMBSを担保として、最長1年の特別融資を行うものだ。中央銀行が「最後の貸し手」機能に基づいて行う特別緊急融資と言っていい。この措置によって、預金者は13日からすべての預金にアクセスできるようになるという。
今後の最大の焦点は、金融機関に対する信用不安が収まらず、システミックリスクが拡大してしまわないかどうかだ。
銀行のビジネスモデルは、短期資金である預金を基に、長期的な融資や債券投資で運用するものであるため、いったん預金取り付けが起きると現金が不足し破綻することになりやすい(詳しくは「銀行の見方を一変させたノーベル経済学賞の研究」を参照)。また、現金を確保するために金融機関が債券や融資パッケージ商品の投げ売りを拡大させれば、資産価格の暴落を誘発し、極端な場合はリーマンショックの再来になりかねない。
今回の危機は、1980年代にアメリカで起きたS&L(貯蓄貸付組合)危機と似た面も指摘できる。
当時、規制下にあったS&Lは、いつでも引き出せる短期の預金資金で、20〜30年の長期住宅抵当貸付を行っていた。1970年代以降の歴史的な高インフレの中で金利が急上昇し、預金による資金調達コストは上昇。固定金利の長期住宅抵当貸付から入る運用収益との逆ざや問題が発生し、信用不安や預金取り付けから経営破綻へとつながった。
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