「700万円損」負けるまで買わせる仕組債販売の闇 狙いは表面からは見えにくい多額の手数料

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皮肉にも、この指針改正は新たな「抜け穴」を生み出す結果となった。先ほど解説したとおり仕組債は、ノックアウトの時に自動的に運用が止まる。顧客が自分の意志で売却の手続きをしているわけではないので、繰り返し購入を勧めても、厳密に言えば回転「売」買にはあたらないという理屈が成り立つのだ。

低コストを武器にしたネット証券が存在感を高める中、対面営業を強みとする証券会社や銀行など既存金融機関は収益源の確保に苦心している。指針改正は結果的に、投信の回転売買による手数料稼ぎに収益依存していた一部事業者が、売却の手続きを経ず現金化が可能な仕組債への提案に重心を移す一因となった。

当局の調査では証券界における仕組債の販売額は従来、減少傾向にあったものの、2020年ごろを機に増加に転じている。このタイミングは、監督指針の改正案が公表された時期と一致している。

ガイドライン改正の効果に注目

今回の日証協ガイドライン改正案には、金融庁側の要請を踏まえ、「過去に販売した仕組債に関する検証をしてから販売せよ」という趣旨の文言も盛り込まれた。業界を牽引し、監督指針改正で生じた抜け穴を塞ぐ当局の狙いが透けて見える。

金融庁職員は「第2、第3の仕組債が現れないよう、商品類型に関わらず適切なラインナップの選定を行われていない場合には、躊躇することなく経営層の責任を追及する」と話す。

過度なリスクを背負う商品を押し付けられ、大切な生活資金を失う被害者がこれ以上生まれないよう、不毛な“いたちごっこ”を終わらせる覚悟が官民双方に求められている。

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