「700万円損」負けるまで買わせる仕組債販売の闇 狙いは表面からは見えにくい多額の手数料
金融庁がハイリスク商品の一種、仕組債の販売に対する締め付けを強めている。当局の働きかけを受けた日本証券業協会は2月、勧誘ルールの見直しを含む自主ガイドラインの改正案を公表した。
仕組債の販売をめぐっては、あこぎな商売で顧客から大切な資産を巻き上げてきた悪徳事業者に対し、当局が正義の鉄槌を下すという勧善懲悪ムードが形成されつつある。
一方、事業者側からは、「仕組債のブーム化は金融庁にも責任がある」と反発の声も上がっている。そもそも仕組債という商品にはどのような問題があるのか。なぜ全国の金融機関で販売が過熱したのか。被害の実例にも目を向けながら、官民双方の言い分に耳を傾け、問題の実態に迫ってみた。
胴元が多くを中抜き
仕組債の代表的な類型である他社株転換債(EB債)を例に取って解説しよう。EB債の価値は、商品ごとに決められた特定の企業の株価などにヒモ付けられている。EB債を購入した後は、参照先の株価の動き方によって3通りの結末がある。
1つ目は、株価などがあらかじめ定めた上限に達して自動的に現金化され、利息分の収益を得る「ノックアウト」。2つ目は、反対に指数が下限に達し、多くの場合に元本を棄損する「ノックイン」。最後が、株価が一定範囲内に収まり満期償還を迎えるパターンだ。
これのどこに問題があるのか。理解しやすいように、話を以下のようなサイコロゲームになぞらえて、極端に単純化してみよう。
仮にサイコロを振って「1」「2」「3」「4」「5」の目が出れば、投資家は元本に対して数%の利益を得られるとしよう。この状況が「ノックアウト」にあたる。しかし「6」が出ると、元本の数割程度の損失が発生するとする。この状況を「ノックイン」という。
金融庁はこうした仕組みに、重大な問題点が2つあると見ている。不透明かつ不当に重たいコストと、リスクとリターンの不均衡だ。
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