「700万円損」負けるまで買わせる仕組債販売の闇 狙いは表面からは見えにくい多額の手数料

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実は「サイコロゲーム」の参加者は、サイコロを振るたびに(つまり仕組債を購入するたびに)、参加料(コスト)を支払っている。証券界は長らく「仕組債にコストは存在しない」との建前を貫いていたが、金融庁は2022年、仕組債の隠れた実質的なコストが年率換算で「8~10%程度」に上るとの試算を公表。庁内では「なかには実質コストが20%超に上る悪質な商品も存在する」(中堅職員)との見立てもある。

投資家はゲームに勝利して利益を得ているのに、実際には多額のコストを支払っているというのは一見、矛盾しているように思えるかもしれない。

この「サイコロゲーム」には、外側から見えにくい“仕掛け”がある。「1」~「5」の目が出る(つまり購入した仕組債がノックアウトする)場合に発生する賞金(オプションプレミアム)は、ゲームの参加者である投資家が総取りしているわけではない。

実際には、胴元(金融機関)と投資家が分け合うことになっている。そしてコスト構造の不透明さをよいことに、胴元側がオプションプレミアムの大部分を中抜きしているケースが珍しくないのだ。これが隠れた実質コストになっている。

当局が購入意義を否定

一方で、ゲームとしての仕組みを理解すると、「面白い金融商品ではないか」と思う人も中にはいるかもしれない。「『6』の目が出ない限り損はしないのだから、『1』~『5』の目に賭けてみたい」というニーズ自体は、おかしなことではない。

ここで大切なのは投資効率、つまりリスクとリターンの関係がゲームとしてフェアなバランスとなっているかだ。

金融庁はノックアウト、ノックイン、満期償還を含む仕組債全体の運用実績を合算して分析。その結果、投資効率は株式や債券など一般的な商品類型よりも劣っている事実が明らかになった。

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