ところが、機械を動かすための電力の供給に支障が生じてしまった。すると、復興需要で製品に対する注文が増えても、生産を増やすことはできない。つまり、供給面での制約によって、生産拡大ができないのだ。今後の日本経済が陥る状態は、基本的にはこのようなものである。
通常の財なら、輸入によって国内生産の減少を補うことができる。しかし、電力は輸入できない。それどころか、西日本と東日本のサイクル数が違うために、西日本から東日本に電力を融通することすらできない。このため、すでに東日本は深刻な電力不足に陥っている。
東京電力の合計出力は6000万キロワット強あるが、このうち約2割の発電機が今回の地震の影響により停止したとされる。ただし、修理中や点検中のものがあるので、3月17日現在の供給能力は3350万キロワットだ(東京電力のホームページによる)。
中長期的に見ると、震災で損傷した発電所のうち火力発電所は復旧できるだろう。しかし、事故を起こした福島第一原発(発電量約470万キロワット)の再建は絶望的だ。こうした事情を考慮すると、電力不足は長期的に継続する可能性がある。
供給不足は、東京電力と東北電力で生じている。したがって、生産活動を西日本にシフトさせることで、需給バランスはある程度は緩和される。しかし、そうした再編成を短期間のうちに実現するのは困難だ。
憂慮されるのは、原子力発電一般に対する社会的な反対が強まることだ。すると、新規建設はおろか、現在稼働中の原発も止めざるをえない事態に陥る危険がある。グラフに示すように、原発はすでに日本の発電総量の約3割を占めるに至っており、これを19年に4割超にまで高めることが計画されていた。これが達成できなければ、日本の総発電量は大きく低下し、日本経済は深刻な打撃を受けざるをえない。今後に計画されている原発比率の上昇が実現できないだけで、日本の発電総量は1割程度不足してしまう。
電力制約による生産減少を前提として、経済全体の需給をバランスさせるためには、総需要が減少しなければならない。そうしなければ、インフレが発生して、強制的に需要が削減されることになる。