価格未定で広告される物件の知られざるカラクリ 住宅購入希望者が知っておくべき広告ルール

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最多価格帯というのは、販売戸数が10戸以上ある場合(10戸未満なら省略可能)に掲載されるもので、原則として「100万円単位」で表示される。販売する住戸で一番多い価格帯は何戸あっていくらの価格帯か、も併せて表示されるのだ。

例えば、「予定最多価格帯:3500万円(4戸)」のように記載される。ただしこの場合、3500万円の価格帯が中心価格帯とは限らないことが注意点だという。実際には物件全体で4000万円以上の住戸が多いといったこともあるからだ。特に予告広告では販売する全住戸の価格がわからないので、予定最多価格帯=中心価格帯ではないことを理解しておきたい。

SUUMO内部で表示規約に関する体制を整備

不動産の広告は、それを掲載した事業者に表示責任がある。その一方で、メディアの信頼性を保つために、SUUMOでは、不動産表示規約に対応する取り組みを行っている。

SUUMOで制作する広告については、社内で作成した不動産表示規約に関するルールブックを作成し、それに準じて制作している。原稿制作担当者には、このルールブックに基づく初期研修をしているが、その研修時間も15~20時間に及ぶという。もちろん、研修後のテストに合格する必要がある。

SUUMOのルールブックだが、表示規約に準じたものだけでなく、ユーザーが比較検討しやすいよう独自のルールも設けている。例えば「SUUMO新築マンション」のマンションレポートに掲載する間取り図は、部屋の用途ごとに統一した色を使うなど。

さて最後に、「住宅購入希望者が広告を見るうえで、知っておいたほうがよいルールはあるか?」とSUUMOに聞いた。2022年9月の不動産表示規約の改定で、交通の利便性や生活施設への所要時間などのルールが変わった。

交通の所要時間は、朝の通勤時間で表示すること、所要時間に乗り換え時間も含むこと、最寄りの敷地からではなくマンションの出入り口から測ることなど、ユーザーにとって実態に近い情報を入手できるようになったので、覚えておくとよいということだ。

住まい探しをするうえで、物件の情報を調べることは重要な工程だ。不動産広告には、不動産表示規約というルールがあること、価格未定でも一定の条件下で広告ができること、広告を掲載する側もルールに注意を払っていることなどを理解し、物件の情報をしっかり読み取ることが大切だ。

山本 久美子 住宅ジャーナリスト

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やまもと くみこ / Kumiko Yamamoto

早稲田大学卒業。リクルートにて、「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任。現在は、住宅メディアへの執筆やセミナーなどの講演にて活躍中。「SUUMOジャーナル」「All About(最新住宅キーワードガイド)」などのサイトで連載記事を執筆。宅地建物取引士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナーの資格を有す。

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