価格未定で広告される物件の知られざるカラクリ 住宅購入希望者が知っておくべき広告ルール

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しかし、「予告広告」の場合には、価格が未定でも広告ができるルールになっている。では、予告広告とはどういった広告手法なのか、説明しよう。

不動産表示規約によると、予告広告とは、「本広告に先立ち、その取引開始時期をあらかじめ告知する広告表示」をいい、本広告をすることを前提として、必要な表示事項の一部の表示の省略を認めているものだ。

新築マンションを売り出すときなどは、販売する戸数分の価格をすべて決めるのに時間がかかり、発売直前に広告をしてすぐに申し込みが始まるとなると、消費者が購入を検討する時間が短くなる。こうした事態を避けるために、販売戸数や価格が未定(または予定価格)でも、それ以外の交通や周辺環境、物件の状態などの多くの情報を提供できるようにしたのが「予告広告」だ。

そのため、予告広告が認められているのは、「分譲宅地(区画を分けて販売する住宅用地)」「新築分譲マンション」「新築分譲住宅(一戸建て)」に限られる。なお、2022年9月の不動産表示規約の改定により、1棟リノベーションマンションも予告広告の対象に加わった。

このように、価格未定の広告がルール違反にならないのは、予告広告という手法を使っているからだ。実は、予告広告で集めた来店客の反響を見ることで、販売価格や販売する戸数を調整する事業者は多い。しかし本来は、消費者に検討する十分な時間を与えるためのものなのだ。

予告広告をした場合は、広告としての必要項目をすべて掲載した「本広告」を必ず出さなければならず、その際に予告した情報と異なる内容にしてはならないことになっている。当然ながら、本広告までの間に、契約したり申し込みを受け付けたりといった販売行為はできない。

不動産広告に違反した事業者への対応

不動産表示規約が守られているかは、不動産公正取引協議会で監視している。全国に9つある不動産公正取引協議会では、不動産表示規約に違反する不動産広告がないか必要に応じて調査したり、ルール違反の不動産会社に警告したり、悪質な場合には違約金を課したりすることで、不動産広告の情報の信頼性を維持するようにしているのだ。

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