「Bing」AIが作成したビジネスメールが秀逸すぎる 処理を的確な方向に導くための「パン屑」とは

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AIは質問者と実際の取引相手の関係を認知などはしていない。

出力される文例に構造的な問題はほとんど出ないが、具体性には欠けることは多い。そこで、質問内容に「過去のさまざまな事例などをもとに探索し適切な文例を推論する」処理を的確な方向に導くための”パン屑”を忍び込ませることで、目的の文章に近づけ、最終的には自分でリライトするというのが、この機能の使い所だろう。

AIと共に目的の情報を探索しよう

「作成」機能について書いてきたが、話題のBingによるチャット検索は利便性は高いものの、まだ実験的な取り組みという印象が拭えない。

例えば現時点では、「今年」「昨年の」といった、細かな時間軸を取り違えることが多い。「2023年の1月に開催されたCESで」と指定しているにもかかわらず、指定したレポートに2022年の情報が混入することがあったが、概ね相対的な時間の変化には弱く混乱を来しやすい。

Bingのチャット検索では、生成された文章の基になっているページへのリンクと参照ページのタイトルが簡単にわかるようになっており、あくまでも検索ツールとして活用するだけならば(つまり数字の正確性や事実関係の正しさなどは自分自身で判別する)、一般的なウェブ検索よりも有益だとは感じる。

GPTが得意な文章の要約を積極的に使い、まとめてくれるため、SEO対策などで無駄に長文になっているページに苦しむこともなく、目的の情報へと辿り着きやすく設計されているように感じる。

ここまでお読みの方ならわかる通り、AIが生成する文章に「論理性」は求められない。細かな数字や時制が支離滅裂であったとしても、「なぜAIは誤解するのか」を知っていれば、情報ソースを当たって確認するだろう。口伝で伝わった情報に関して、その基になる情報源を辿るのと同じだ。答えを探索するための道具として、十分に使いこなせるレベルと感じている。

また、ユーザーはあらかじめ多くの情報や情報の関係性を伝え、AIが情報を探索する手伝いをすることでAIのパフォーマンスを高めることもできる。「それは違う」と、検索結果に異議を唱えると追加の質問で正しい探索の方向へと誘導することも可能だ。

膨大な情報の海を論理的に整理し、複雑な関係性を認知したうえで指示すれば、AIは目的の情報へと近づくための強力な援軍として働き、結果として自分自身が得意な領域に集中する余裕を与えてくれるはずだ。

また、プログラムコードの作成支援機能をすでに組み込んでいるように、雛形作成機能などがMicrosoft 365(旧Microsoft Office 365)に本格的に応用するのは時間の問題だろう。ナレッジワーカーの仕事の負担軽減につながるのはもちろん、多くの企業顧客をすでに抱えているマイクロソフト自身の事業を強化することになるはずだ。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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