生涯現役!英国高齢者たちの自由な「恋愛事情」 高齢者は恋愛をしないなんて誰が決めた?
愛情表現の機会が頻繁にあるイギリスでは、筆者が見聞きしただけでも、年齢層や結婚相手あるいはパートナーがいる・いないにかかわらず恋愛関係に至る人が実に多い。
10年ほど前のこと。家人の母エリザベス(当時93歳)は2回の結婚で夫と死別し、イングランド南部の海岸保養地チチェスターにある高齢者用施設に住んでいた。個室にいるときも口紅を塗り、首には真珠のネックレス。かくしゃくとした老婦人だった。
美形ではなかったものの、なぜか男性たちが寄ってくる。元実業家の男性入所者と腕を組んで施設内の食堂に向かうのが日課だった。まもなくして、同伴男性が急死する。エリザベスはしばらく落ち込んでいたが、高齢化でより手厚いケアが必要となったため、介護施設に居を移した。
ベッドの脇には大量のラブレターが
ある日、新しい施設のエリザベスの部屋を訪ねてみると、ベッドの脇のテーブルの上に手紙が積まれていた。前の施設にいた時に知り合った男性、愛称「コン」が送ったものだった。「私がいなくなって、寂しくて仕方ないっていうの」。コンは当時、85歳。「私のこと、親切で礼儀正しくて、素晴らしい女性だって書いてある」。
ファンレターのようなものだと筆者は理解し、特別な印象を持たなかったが、それから数カ月後、コンが引っ越してきたことを知り、非常に驚いた。高齢者用あるいは介護施設に入所するには、相当の手持ち資金が必要となるため、住んでいる家を売る人も多い。高齢者の家族の財政面、および精神的支援も欠かせない。入所は一家の一大事なのだ。
従って、コンが引っ越すということは、家族や関係者の了解を得るために、相当の努力、頑固さ、そしてエリザベスに対する愛情をコンが示したことを意味する。
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