そういった状況を勘案すると、植田氏の所信聴取が非常に安全運転だったことにも頷ける。また、植田氏は政府・日銀の共同声明の改定に否定的な見方を示したが、これも、具体的な方向性を示したくないことが背景にあるのだろう。
出来るだけ早期の物価目標達成も目指していない印象で、かつ賃金上昇に新しくコミットするわけでもないとなると、植田氏は何を目指すのか。
12月に「信頼度」は大幅低下
現状では、植田氏のKPI(重要業績評価指標)はわかりにくい。だが、植田氏は「経済の見方、政策運営の考え方をわかりやすく発信することが重要。記者会見や講演で広く国民にわかりやすい説明を心がけたい」と所信聴取で述べており(発言内容は筆者による要旨)、コミュニケーションの改善を図ろうとしている可能性が高い。
ここで、日銀が年4回実施している「生活意識に関するアンケート調査」では、「日本銀行に関する認知度・信頼度等」が年2回調査されている(6月調査と12月調査。2009年6月調査までは毎回実施)。
直近2022年12月調査(調査実施期間は11月4日~12月1日)では、日銀を「信頼している」とした割合から「信頼していない」とした割合を引いた「信頼度DI」が28%ポイントと大幅に低下し、2008年9月以来の低水準となった。
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