イタリア産「生ハム」がしばらく食べられない理由 サイゼリヤの名物「プロシュート」も止まったまま

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ところで話が変わるようだが、コロナ禍の初期段階のころ。感染の進む都心部から、地方の県に遊びに行っただけで非難された。人々は居住地から離れるなと叫ばれた。たとえば北海道の感染状況と沖縄の感染状況は別物とされた。たとえば沖縄の感染状況が酷いからといって、北海道をまん延防止等重点措置地域に指定することはない。

おなじく2022年にイタリアで生じたアフリカ豚熱も、初期段階では特定地域だけではなくイタリア全土を輸入禁止対象にするという日本の決定は厳しすぎると考える日本の輸入業者は多かっただろう(なお現行法で日本の行政が間違った対応を行っているわけではない)。

現実には、残念ながら、その後にイタリアの多くの地域にアフリカ豚熱が広がったが、今後、たとえば特定地域での沈静化が確認できれば限定した輸入再開の可能性がないわけではない。実際に国によっては、未発生の地域からの輸入品に関しては認可していることもある。

ただし残念ながらイタリアの生ハムについては、特定の取り決めを行う必要がある。イタリア側からの正常化の宣言とともに、両国の合意が必要となる。その道のりは、現在のところ遠い。最悪の場合は数年がかかるかもしれない。これは食料を海外に依存する日本にしてみれば少なからぬインパクトだろう。

国産生ハムで代替していくのか

そこで、スペイン、フランスなどの輸入品にくわえて再注目されているのが国内産の生ハムだ。これまで日本の生ハムはさほど活用されていなかった。スライス済みのものの流通量が少ないのもあるが、イタリア産からすると比較的に高価だったからだ。

しかし国内産への切り替えは外国産の価格高騰を招く可能性がある。さらにアフリカ豚熱は、イタリアだけの出来事と考えてはいけない。現在、日本は水際で防いでいるが、いつ日本でもアフリカ豚熱が蔓延するかわからない。これは生ハムに限らず、豚肉加工全般に影響する。

アフリカ豚熱に感染してしまうと豚はほぼ死亡する。国内でアフリカ豚熱が確認されると養豚所で飼育する全頭が殺処分になる。さらに日本国内で、野生のイノシシの感染が確認されても、日本の豚関連商品が輸出停止になる可能性がある。輸出産業にも影響を及ぼす。

現在、生ハムを取り巻く状況は、「危険」と薄肉を隔てた状態にある。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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