病院にかかるほどではない目の疲れには、市販の目の疲れ対策用の目薬も有効だ。この際、「使い方にコツがある」と横井さんはアドバイスする。
「まず、知っておきたいのは、市販の目薬には『人工涙液(るいえき)』と『薬効をうたっている目薬』の2種類があるということです」
「人工涙液」と「目薬」の違い
人工涙液は、体液とよく似た電解質組成によってpHや浸透圧などを合わせてあるもので、多くは目の渇きを緩和する。一方、眼精疲労など効能をうたっている目薬は、目の疲れを取る成分(ビタミンB12やネオスチグミンメチル硫酸塩など)が少量入っている。
さまざまな種類があるので、どれを使ったほうがいいかわからないときは、薬局・ドラッグストアの薬剤師、登録販売者に相談するといいだろう。
目薬の使用で注意すべきは、用法用量を守ることだと横井さんは話す。
「目の表面を覆う涙は、油層と、ムチンを含む水層の2層構造になっています。目薬を1日に10回を超えて差すと、この層が崩れ、むしろ(眼精疲労の原因となる)ドライアイを悪化させることもあります」
実は、横井さんが診ている患者のなかには、“目薬の差しすぎ”が問題になっている人が意外と多い。目薬を差すことが習慣になっているため、回数を減らすのは思った以上にたいへんだという。
目によいとされるサプリメントなども売られているが、どうなのだろうか。
「ピント合わせや神経の修復に対しては効果があるかもしれませんが、眼精疲労は原因が多岐にわたるため、その効果はわかりません」(横井さん)
我々は日々、目からの情報を多く受け取り、生活している。それだけに眼精疲労の症状は思った以上に深刻だ。セルフケアや目薬を使っても、モノを見るのがつらい、目を開けていられないといった症状が改善できなければ、これくらいで病院に行ったら申し訳ないと思わず、受診を。
正しい視力矯正ができているかを確かめたり、何らかの病気が原因で起こっていないか検査してもらったりしたほうがいいかもしれない。
「眼精疲労をもたらす老視(老眼)やドライアイは加齢とともに進みやすくなります。完全に治すのは難しいですが、日常生活の工夫や目薬の使用などで、日常生活に支障がないように上手に付き合っていくことが大切です」(横井さん)
次回は、眼精疲労の主な原因となっているドライアイについて紹介する。
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(取材・文/伊波達也)
横井則彦医師
1984年、京都府立医科大学卒業。86年、同学眼科学教室助手。95年、同学講師。96年、オックスフォード大学研究員、99年、京都府立医科大学眼科学教室准教授を経て、2016年より現職。現在、京都府立医科大学病院眼科でドライアイ専門外来を担当し、ドライアイ研究会の世話人代表を務める。
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