ワークマン「アパレル本格参入」で露見した危うさ ユニクロとの「対決姿勢」が鮮明になった背景

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孫社長の発言にある、もうひとつの「仕掛け」とは「NTT」に「日本で最大の企業」と形容詞を付けている点だ。

当時、ソフトバンクはすでに年商4000億円余りの堂々たる大企業なのだが、対するNTTは「日本最大の企業」だけあって、12兆円を超える。ソフトバンクの実に30倍以上で、普通に考えれば「勝てる相手」ではない。それでもあえて、敵を「日本で最大の企業」と表現するのは、「ソフトバンク=挑戦者」であることを明確にするためだろう。

人が共感を抱くストーリーの主人公には共通点がある。それは敵が「受け入れがたい価値観を体現」していて、さらに「到底、勝てそうもない巨大な相手」であるということだ。

『スターウォーズ』『ハリーポッター』『鬼滅の刃』でも、敵は「暴力による支配」などという「一般には受け入れられない価値観」を信奉している。そして主人公から見れば「巨大すぎる存在」でもある。

孫社長の発言は、敵であるNTTを「高価格、低速という受け入れがたいことの原因」と定義し、さらに「到底勝てそうもない巨大な相手」であることまで強調している。まさに「共感を呼ぶストーリーの法則」そのままなのだ。

とはいえ、ここまで競合企業を敵視する発言を公にする経営者は極めてまれだ。多くの人にとっては「他人の悪口」を聞くのは、決して心地よいものではない。加えて、明らかに敵視する発言は、相手からの激しい反撃を招きかねない。現代であれば、SNSを通じた経営者同士の「泥沼の悪口合戦」に陥る危険すらある。

そこで広報の巧みな企業は「敵」を「具体的な社名」ではなく、「抽象的で大きな問題」に設定する。

『獺祭』で有名な旭酒造の巧みなPR戦略

日本酒『獺祭』で有名な旭酒造を例に見ていきたい。旭酒造は日本酒業界では、広報PRで最も成果を上げた会社だろう。「大吟醸しか造らない」という品質への強いこだわり、そして「職人の経験とカン」に頼らず、温度管理を徹底するなど科学的な製法で、今では「高品質な日本酒」の代名詞的な存在となっている。

日本酒を含む、飲食関係は実は広報PRの難しい分野だ。というのも、あらゆる商品が「当社の商品は美味しいです」とPRするからだ。

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