ワークマン「アパレル本格参入」で露見した危うさ ユニクロとの「対決姿勢」が鮮明になった背景

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「デザインさえよければ割合、参入できる。機能は必要なので、機能にしないと某トップメーカーのUさんに絶対負けますので、正面でぶつかっちゃいけない」(テレビ朝日)

「ユニクロさんは強いんで、同じテーブルになると必ず負けますんで、できるだけユニクロの世界とかに近づかないようにしてます。ユニクロさんも最近、機能を意識したり、カラーを強調しだして、結構近づいてきてるんですが、価格的にいうと半分ぐらい。機能的にいってもうちのほうが強いんで。われわれはデザインを追っかけ、向こうは機能を追っかけると」(TBSテレビ)

質問した記者の「誘導」もあったのだろうが、明確に「ライバルはユニクロ」と語っているのだ。

ちなみに、記者泣かせの取材対象の代表格といえば銀行だ。どのように聞き方を変えて質問したとしても、このような明快な答えは出てこない。失言を恐れ、周囲に細心の注意を払うあまり、とてつもなく無難な言葉しか発せられないのだ。もし銀行の会見で同様の質問をしたら、このような回答になるだろう。

「ユニクロさんがライバルだなんて、とんでもない。われわれはあくまで新参者ですので、すべて勉強させてもらっております」

テレビにいかに取り上げてもらうかは、広報戦略で重要だ

「面白みに欠ける言葉」しかなければ、自ずとメディアでの扱いは小さくなってしまう。だが、「ライバルはユニクロ」と明言してくれると、番組や記事は格段につくりやすくなる。

ある程度の経験がある報道番組の製作者であれば、「物価高に負けるな!ユニクロ対ワークマン 低価格アパレル戦争」のような企画タイトルが、1分もかからず、思いつくことだろう。実際、今回の参入をテレビは「ユニクロとの対決」として報じている。

番組製作者は、1社単独で番組化するのをできるだけ避けたいと考えているものだ。1社だと、どうしても報道ではなく、広告のように見えてしまうからだ。1社での特集は「1社モノ」などと呼ばれ、トヨタのように日本屈指の注目度や影響力のある「特別な企業」でしかつくらないのが一般的だ。

だが、「ユニクロ対ワークマン」という構図にした瞬間、メディアはワークマン単独よりもはるかに大きく取り上げやすくなる。加えて、視聴者の関心もつかみやすくなり、視聴率も期待できる。

対決姿勢を鮮明にしたことで、他に先行する大手の格安アパレルはいくつもあるにもかかわらず、一瞬で新参者のワークマンが「王者ユニクロの挑戦者」としての地位を広報PR面で確立できたということなのだ。

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