「納得できる仕事がない」60歳キャリア迷子の苦悩 どの世代でもキャリアに悩む人が増えている訳

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■出産、育児でキャリアを中断せざるをえなくなった人

とくに女性に多いのは、子どもの出産や育児をきっかけに、それまでのような働き方ができなくなり、キャリアの見直しをせまられるケースです。結婚して子どもが生まれても共働きを続ける夫婦が増えているなか、多くの働く女性にとって、出産・育児にともなう長い期間のビジネスキャリアの中断は大きな悩みのタネとなります。

たとえば、育児休業が終わったあと、職場でもとの業務、職位への復帰が叶わなかったり、いわゆるマミートラック(育児休業復帰後の女性が自分の意思とは関係なく出世コースから外されること)に乗ってしまったりすることが問題になっています。

近年、男性の育児休業の取得も進みつつありますが、2020年度の男性の取得率は12.7%、女性は81.6%と、まだまだ女性のほうが多く、仕事への復帰について悩む人が多いのが現状です。

厚生労働省の調査によれば、育児休業からの復帰率は女性の89.5%となっており、多くの人がもとの職場に復帰していることになります。しかし、そのなかには育児や家事との両立のため、時短勤務にしたり、雇用形態を正社員からパートに変更したりするなど働き方の調整を行う人が多くいます。

また、人によっては、育児休業期間を過ぎたあとも、子どもが2~3歳と小さいうちは、ずっと一緒にいたいと考える場合もあるでしょう。この場合も、改めて今後のキャリアの見直しというのは必要となります。

さらに、育児休業を機に転職をしようと考える場合、ブランクが長ければ長いほど再就職へのハードルは高くなり、選べる仕事も限られてくる傾向にあります。そして新たに仕事に就く場合、やはり育児などとの両立を考えて、パートや派遣社員など、非正規雇用として働くことを選択する人が多くいます。

このように出産・育児によって、一時的にキャリアを手放さなければならない、あるいは、第一線で働き続けることを諦めなければならない状況を、「キャリアの中断」と感じてしまう人もいるでしょう。

再就職するにあたっても、自分が望むような仕事や、育児との両立ができる仕事が見つからないなど、思いどおりにはいかない場合もあります。出産し、子どもを育てていくことは素晴らしいことですが、キャリア形成においては、まだまだマイナスと捉えられてしまうことが多いのが現状です。

シニア世代の「キャリア迷子」も

■役職定年、定年退職など、制度上の転機を迎えた人

60歳や65歳のシニア世代の方も、キャリア迷子になる人はいます。

意外に思われるかもしれませんが、私たちが実施している公共職業訓練にもその世代の方は多く通われています。公的年金の受給開始を75歳まで繰り下げられるようになったことや、そもそもの平均寿命がのびたことで、老後の生活のために、あるいは社会とのつながりを持ち続けたいなどの理由で、定年退職後に再就職を希望する人が増えているのです。

しかし、ビジネスキャリアの“第二幕”を順調にスタートできる人ばかりではありません。60代を対象とする正社員の求人は少なく、再就職先では契約社員やパートタイムとしての雇用となるのが大半です。

そのため、給与も前職より下がってしまう傾向にあり、自身が納得できるような仕事内容や待遇の仕事が見つからず、再就職するまでに時間がかかってしまう方もいます。

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