「納得できる仕事がない」60歳キャリア迷子の苦悩 どの世代でもキャリアに悩む人が増えている訳

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多くの日本企業では、長い間60歳定年制度が採用されてきましたが、2021年に高年齢者雇用安定法が改正されたことにより、2025年までにすべての企業で65歳までの雇用確保が義務付けられることとなりました。70歳までの就業機会の確保も努力義務となり、定年制そのものを廃止するような動きもあります。

このような背景もあり、定年後、これまでの会社に再雇用という形で勤め続ける人も多くいます。しかし、これまで任されていた仕事から外されたり、定年前より職位や給与が下がったりすることで、不満やストレスを抱えるといったケースも少なくありません。

また、それより前の55歳くらいに、役職定年となることで同じような状態に陥ってしまうこともあります。こちらの場合も、社内では一定の地位にあり、部下もいて管理的な立場にあった人が、役職を解かれて部下がいなくなったり、給与が下がったりして、仕事へのモチベーションが下がり、結果的に本人のアイデンティティーにも大きな影響を及ぼすことがあります。

役職定年とはならなくても、50~55歳くらいで給与がピークになって、そこからあとは徐々に下がっていく企業も多いです。なかには、自分はそんな待遇に甘んじることはできないと、50代前半で早期退職して、転職を図る人もいます。

その際に、しっかりしたキャリアの見通しを持って退職、転職をするのであればよいのですが、必ずしもそういう人ばかりではありません。やはり給与など待遇の面で、これまでどおりもとの会社に勤め続けていたほうがよかったと、あとになって後悔する人もいるのです。

増えるメンタルヘルス不調

■メンタルヘルス面で不調を抱えている人

仕事でのストレスや悩みが原因で、メンタルヘルス不調に陥ってしまうケースです。私たちが実施している公共職業訓練は1クラス、20~30名ほどで実施していますが、現在はこのなかの、だいたい1、2割程度の人がメンタルヘルス不調を抱えていると感じています。

これはきちんとデータを取ったわけではなく、あくまで接して、話してみてわかった範囲です。もしかすると、それを隠している人もいるかもしれず、実際にはもっと多い可能性があります。

職場において、なにか強いプレッシャーをかけられたり、心が傷つけられたりすると、人はメンタルヘルス不調を抱えてしまうようになります。あるいは、強烈なパワハラやいじめを受けていなくても、

「会社から求められるような成果が出せない」
「頑張っているのに評価されない」
「思うようにスキルアップできない」
「上司や同僚など、社内での人間関係がうまくいっていない」

などといったことがきっかけで、少しずつメンタルヘルス不調になり、最終的にはそれまでの仕事を継続することができなくなる人もいます。そして辞めてしまったあとも、傷つけられて弱っている心の状態では、すぐに次の仕事を見つけることもできません。厚生労働省から発表されている統計データなどからも、うつ病を始めとしたメンタルヘルス不調に陥る人が、増加傾向にあることが明らかになっています。

もちろん、メンタルヘルス不調といっても、重さも症状も人それぞれです。少し休養すれば快復する場合もあれば、メンタルクリニック等での治療が求められる場合もあります。メンタルヘルス不調で怖いのは、状態が悪くなっていくと、最悪の場合、自ら命を絶ってしまう危険があることです。

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