戦国武将が「粗食」で戦い続けられたワケ 信長・秀吉・家康の強さの秘密は"みそ"にある

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信玄は、織田信長でさえ恐れさせ、徳川家康も三方ヶ原の戦いで大敗させたほどの強豪である。その強さの秘密のひとつは、陣立みそだったのだ。

信州のように海のない地域では、塩はつねに備蓄していなければならない。みそは塩分を蓄えるのに格好の食糧であった。

武田家には、川中島の周辺地域でみそを作るよう奨励した文書も残されている。川中島は信玄の最大のライバル、上杉謙信との戦いが繰り広げられた地である。信玄は戦いに備えてみそを準備したのだ。

これが現在の信州みそのルーツである。

コメとみその食事は完全食

腹が減っては戦さができぬ。戦国時代の武士たちは、日常、コメを1日当たり5合食べていたそうだ。おかず代わりに食べていたのが、野菜を入れたみそ汁だ。

戦闘中ともなれば、コメを1日1升(10合)食べた。エネルギー換算すると5200キロカロリーだ。

コメは豊富な炭水化物を含む、栄養価の高い食物だ。一方、みその原料である大豆はタンパク質や脂質を多く含んでいる。コメと大豆を合わせれば、3大栄養素である、炭水化物、タンパク質、脂質がバランスよく摂取できるのだ。

また、コメはアミノ酸の中でリジンだけが少ないが、大豆はこのリジンを豊富に含んでいる。反対に大豆はアミノ酸のメチオニンが不足しているが、コメにはこのメチオニンが含まれているのだ。

しかも、当時、武士たちが食べていたのは、白米ではなく玄米だった。精米技術が発達していなかったからだ。玄米は、白米に比べて、ビタミン、ミネラル、タンパク質が豊富に含まれている。

つまり、コメと大豆の組み合わせは、理想的な完全食なのである。

ただし、玄米は白米に比べて消化が遅い。この欠点を補うのがみそなのだ。みそには酵母菌、乳酸菌、酵素などが含まれていて、玄米の消化を助ける。

コメとみそと野菜しか食べなかった「草食系」の戦国武士たちが強かったのは、このコメとみそを中心とした完全食があったからなのである。

稲垣 栄洋 静岡大学農学部教授

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いながき ひでひろ / Hidehiro Inagaki

1968年静岡市生まれ。岡山大学大学院修了。専門は雑草生態学。農学博士。自称、みちくさ研究家。農林水産省、静岡県農林技術研究所などを経て、現在、静岡大学大学院教授。『身近な雑草の愉快な生きかた』(ちくま文庫)、『都会の雑草、発見と楽しみ方』 (朝日新書)、『雑草に学ぶ「ルデラル」な生き方』(亜紀書房)など著書50冊以上。

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