戦国武将が「粗食」で戦い続けられたワケ 信長・秀吉・家康の強さの秘密は"みそ"にある

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そして、三河の土地はやせていた。また、水の便が悪い台形状の土地が多く、水田を開くことができなかった。

だから、大豆が盛んに栽培されたのである。大豆しかないので、豆みそしか作れなかったというわけだ。

だが、こうした環境の厳しい土地だったからこそ、強靭な三河武士が育ったのである。

強豪たちを育てた赤みそ文化圏

三河出身の徳川家康をはじめ、尾張出身の織田信長と豊臣秀吉。天下統一にかかわった3人の武将は、いずれも赤みそ文化圏で育った。

この3人は、親族や家臣を全国に配置したので、江戸大名の7割は愛知県にゆかりがある。前田利家、本多忠勝、加藤清正、福島正則、山内一豊などの名将は、皆、赤みそ文化圏の出身だ。

赤みそ文化圏は、なぜ、このように優秀な人材を生み出したのだろうか。

大豆だけで作る赤みそは、米こうじや麦こうじを加えて作るみそよりも栄養価が高い。大豆には、ストレス軽減効果のある神経伝達物質、セロトニンのもとになるトリプトファンが豊富に含まれている。セロトニンは「しあわせ物質」と言われるほどで、気分が落ち着き、前向きになって士気が高まるのである。

それだけではない。赤みそには、脳の機能を高めるレシチンや、疲労回復や免疫機能を強化する効果のあるアルギニンまでもが含まれている。

三河武士が赤みそに育てられたというのは、決して大げさな話ではないのだ。

みそ作りを奨励した武田信玄

みそは日本各地で作られているが、信州みそも有名だ。信濃のような山国では、コメは栽培しにくい。そこで大豆を使ったみそが作られたのである。

戦国時代、信濃を支配していたのは武田信玄である。信玄はみそ作りを奨励し、「陣立(じんだて)みそ」という戦場食を考え出した。陣立みそとは、豆を煮てすりつぶし、こうじを加えて団子にしたものである。こうしておくと、進軍している間に発酵してみそとなる。

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