UFCを猛追の格闘技「ONE」はなぜ大化けしたのか 動画の総視聴数がNBAに次ぐ世界2位に躍進

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イベントが思うように開催できず苦しかったコロナ禍が収束しつつある中、イベントをどこまで拡大していけるかが今後の経営のカギを握ることになる。ゆくゆくは毎年アジア、ヨーロッパ、アメリカのそれぞれの地域で年間50回のペースでイベントを開催することを目標とする。

いまや日本のパートナーからも熱視線が注がれている。ONEの試合は日本では現在、ABEMA格闘チャンネルで視聴可能だ。同チャンネルの北野雄司エグゼクティブプロデューサーは、「数年前に日本のテレビ局からすげなくされたときにチャトリ氏が怒り出したのをみて、ONEの価値を信じる姿勢と情熱に惹かれた」という。

ONEはABEMAでは他の総合格闘技と同様に25〜35歳の男性が主要な視聴者層となっており、「コンテンツとして有望だ」と北野氏は語る。スマホの画面は、サッカーなどと比べても、格闘技に適しているとの考えだ。

アジアのサブカルの台頭が追い風に

UFCなどと違い、アジアのイベントはほぼ時差なしで中継できることも大きい。円安のためにファイトマネーの額が円建てでは大きくなっていることもあり、今後ますますONEは日本人ファイターが海外に挑戦するための場として重要になってくるとみる。

2022年に話題となった那須川天心と武尊(たける)の試合で、PPV(ペイ・パー・ビュー)で5000円前後の視聴チケットが50万枚以上売れたことは記憶に新しい。2022年にABEMAはONEのイベントを20回以上放送した。2023年には63回のイベントを放送し、そのうち5回をPPVとする予定だ。

これまで格闘技のグローバルスタンダードとなってきたUFCの選手が相手への敵意をむき出しにするのに比べ、「アジアの格闘技は、ファイティングスピリット、謙虚さ、名誉、リスペクトといった価値観を重んじる」とチャトリ氏は説く。

近年、BTSや韓国ドラマが世界的に人気となっているが、そうしたアジアのサブカルチャーの台頭もONEの追い風になっているとみる。

「ローカルな連関性とグローバルなアピールがビジネスを成功させるために必勝の公式」。それが、アジアの格闘技による世界制覇を狙うチャトリ氏の信念だ。

舛友 雄大 中国・東南アジア専門ジャーナリスト

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ますとも・たけひろ / Takehiro Masutomo

カリフォルニア大学国際関係修士。2010年中国メディアに入社後、日本を中心に国際報道を担当。2014年から2016年までシンガポール国立大学で研究員。

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