UFCを猛追の格闘技「ONE」はなぜ大化けしたのか 動画の総視聴数がNBAに次ぐ世界2位に躍進
最後の賭けとして考えたのが、当時急速にアジアで広まりつつあったフェイスブックでの一点突破だ。躍動感があふれる短めの動画を無料で大量に投稿したところ、人気に火がついた。これがきっかけで、その後は指数関数的にリーチが増えていったという。
冒頭の大会には、発信力の強さからビジネス界でも一目を置かれる青木真也選手はじめ多くの日本人格闘家が出場していた。観客席にいた日本人女性(21)は、日本の格闘技大会「K-1」や「Rizin」などと比べ、「世界的なところ」に惹かれると話してくれた。普段からアプリやYouTube、インスタなどでONEの動向をチェックしているそうだ。
企業価値は10億ドルにのぼる
ONEは創業11年で、セコイアキャピタル・インドをはじめとする著名ベンチャーキャピタルから出資を受けている。アメリカの調査会社であるCBインサイツもONEの企業価値を10億ドルと見積もっており、現在ではアジア有数のユニコーン(10億ドル以上の評価を受ける未上場企業)として認知されている。
テック系がひしめく東南アジアのスタートアップ業界で、格闘技というコンテンツによって勝負するONEは異色の存在だ。
ONEはアジア独自の価値観を前面に打ち出すことで、アメリカのUFCの「一強」が長く続く総合格闘技の世界に一石を投じた。アジアの格闘技は数千年の伝統を誇り、日本の柔道、空手や中国武術、タイのムエタイなどその種類も多様だ。その割にビジネスで成功した格闘技団体がない。そこにチャトリ氏は着目した。
「現在のONEの企業価値は20億ドルまで上がっている」というチャトリ氏にIPO(新規公開株式)の見通しについて聞くと、「今後1〜2年で、市場の状況が良くなったら」との返事だった。
とはいえ、ONEはまだ赤字経営のようだ。チャトリ氏は現在世界に10のオフィスがあると豪語するが、従業員数などの数字は開示していない。また、イベントチケットの有料販売比率も明かせないとのことだった。
チャトリ氏が重視しているのは、総視聴数とファンベースだという。「私たちの総視聴数とファンベースは飛躍的に伸びています。最終的に収益はこれらの数字を追いかけてきます」とチャトリ氏は説明した。
課題について聞くと、本社および海外支社での人材の確保をあげた。シンガポールを始めとして東南アジア各国では、格闘技のイメージはまだまだネガティブなところがあるためだ。
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