これは全部、実際に事が起こる前の話で、私たちは実際にどうなるのか先行きを案じていた。スティーブがこんなふうに予言していたのは、彼がこの作品は大成功を収めるって信じていたからだ」
「そして彼はこう言った。『映画が公開されればすぐにわかるだろう。マイケル・アイズナー(ウォルト・ディズニー・カンパニーの最高経営責任者)は、競争相手に力を貸してきたことを悟るだろうね。
そのとき、僕たちに契約の再交渉を持ちかけてくるはずだ。僕らはそれに応じて、その場で50/50(フィフティ・フィフティ)のパートナーシップを要求するんだ』」
ジョブズは状況を完璧に読んでいた
「このときのスティーブは、昔の彼、つまり壁をぶち破ってすべてを自分のために手に入れようとしていた彼とは、別人だったと言ってもいい。
彼はもはや、そこは目指す場所じゃないという結論にたどり着いたようだった。目指すところは、フィフティ・フィフティである、とね。
それこそがグッド・スタンディングの状態で、それは正攻法だった。
だけど、仮に私たちがフィフティ・フィフティのパートナーシップを求めるのであれば、事業に必要な資金の半額を当然自分たちで出資しなければならない。ピクサーにはそんなお金はなかったんだよ」
ティム:「なるほど。それで資金が必要だったんですね?」
エド:「そうなんだ。株式公開に打って出れば、資金も調達できるだろう。それから再交渉の場に臨めば、うまくいけば相手とフィフティ・フィフティの契約を結ぶことができるからね。
映画が公開された数カ月後、スティーブの元に、マイケル・アイズナーから電話がかかってきた。ぜひ再交渉したいという申し出だった。
スティーブはこう返事をした。『もちろん。私たちが求めるのは、フィフティ・フィフティのパートナーシップ契約です』と。
すべてはスティーブが予測したとおりの展開だった。かなり驚いたね。なんとまぁ、彼は完璧に言い当ててたじゃないかってね」
エドは高校時代、アニメーターになりたいと思っていたことがある。美術の成績も良かった。
大学1年が近づく頃、彼は自分の実力では、ディズニーのアニメーターが求めるレベルには達しないと悟り、物理学を歩む道へと進路を変えた。
多くの人は彼のこの判断を、矛盾していて一貫性がないと思うだろう。
それに対して彼はこう反論する。
「現在にいたるまで、多くの人は、芸術と物理学は根本的に違うモノだって考えてる気がするんだ。だけど、僕はそれを違う角度から見つめてみたいと思ってる。
それは、多くの人が芸術に対して抱いてる、根本的な誤解から生まれてるんじゃないかと思う。みんな、芸術は描くことを学ぶとか、自己表現の手段を学ぶとか思ってる気がするんだ。
でも実際、芸術家と呼ばれる人たちがしていることは、見る目を養うこと、これなんだ」
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